前立腺重量と潜伏癌(ラテント癌)
前回の文献解説で、前立腺容積=前立腺重量が増えれば、PSA-density値0.23ng/mL/cm3をカットオフ値として計算すると、60cc(60グラム)でも、PSA値13.8以下で安全圏に入る可能性が出てきました。
ところが、ラテント癌の前立腺重量との関係を右のような統計で見直すと、PSA-densityのカットオフ値がすべての前立腺重量で信頼できるかどうか疑わしくなります。
この表で分かるように、前立腺重量60グラム以上では、75%の患者さんが前立腺癌(ラテント癌)を持っていることになります。
ただし、PSA-density値がカットオフ以下であれば、グレソン・スコアが低く臨床的に全く問題ないのであれば、ラテント癌の確率が高くても問題ない訳です。
データは解釈の仕方により、理論展開が異なる方向に進むことがあります。私がすべて正しいことを述べているとは限りませんから、まず疑って下さい。どんな人間も自分の発する言葉や考え方に呪縛されます。例え、一時は正しくても、永劫に正しいことが保証された訳ではないのです。また、本当の真理であっても、この宇宙の時空間にあっては、100年後(もしかすると数年後)には全く異なる真理になることもあるのです。真理は平気で嘘をつき、思考する者を簡単にだまします。それが真理です。
大いなる意思(宇宙意識・神)が本当に存在するならば、いつも人間を相手に戯れるのです。『どうだわかるか?』『では、これではどうだ?』『こんな風にもなるんだぞ!』『惜しかったな。』『残念!勘違いしたね・・・フフフ』というイメージです。
【参考文献】
最近の日本の前立腺潜伏癌(ラテント癌)の臨床病理学的検討
和田鉄郎 著
1987年日本泌尿器科学会誌
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コメント
PSA値(前立腺特異抗原)が高値ても胎児性増殖因子(tMK)の発現がなければ潜伏癌(良性で転移しない)であって放置しても一生を全うすることが可能です。なまじっか潜伏癌の状態で手術除去すると除去組織の修復過程において遺伝子変異(11p11,2)を惹起して遠隔転移癌の再発の可能性が非常に高くなります。
2007年10月2日,日本分子腫瘍マーカー研究会にて発表。
【回答】
貴重な情報ありがとうございます。
心強く思います。
投稿: 工藤憲雄 | 2010/08/18 06:30
がん細胞の定義が変更されました。ぜひお読みください。
投稿: 工藤憲雄(日本分子腫瘍マーカー研究会会員) | 2015/05/02 12:19