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前立腺癌の進行度分類

Tnmpca前立腺癌の臨床病理学的分類は以前からWhitmore-JewettのABCD分類システムが存在しました。
しかし1997年からは、臨床現場でそれまでなかったPSA検査や超音波エコー検査が登場し、それら検査を考慮したTNM分類が採用されつつあります。


T1(Aステージ)は、直腸診では癌は触れませんが、PSA検査や超音波エコー検査でたまたま異常値、異常所見として見つかる病期・ステージです。
T2(Bステージ)は、直腸診で癌を触れる状態を表しています。癌が硬結として触れるくらいですから、前立腺癌の体積は1㏄以上のボリュームが存在することになります。癌細胞の数に概算すると、何と約10億個になります。10億個に上る癌細胞がすべて秩序のとれた行動をするとも思えません。中には癌組織から自分勝手に遊離して、リンパ管、骨、他の臓器に移動してしまいます。これが転移です。ですからT2だといっても安心できない訳です。
解釈#2のグラフ【1】をご覧になれば、一目瞭然でしょう。


Monographpca10_3【参考文献】
「早期前立腺癌モノグラフ」
ニューヨーク市スローン・ケタリング記念癌センター
前立腺癌センター副所長 大堀理 著
泌尿器科主任教授 ピーターT.スカルディーノ 著

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コメント

いつも貴重な情報発信を有難う御座います。独自の視点から疾患に対する見解を発信される勇気に本物の医師のありかたを見た気が致します。さて、Bステージ油断するべからずと言うことが良く理解できました。方法論はさておき、早期発見の上で癌をAステージに留めることが最善と言うことですか。また、運悪くBステージに来てしまった場合は、さまよい出した癌細胞の活動を抑えるような何らかの処置をすると言うことなのでしょうか。Bステージだからと言って切ったりすると、もっと悪い結果になるような気がします。ご教示頂ければ幸いです。

【回答】
ステージBということは、直腸触診で前立腺に硬結が触れるということです。
本来、前立腺の外を出ていない筈の癌細胞が、慎重に丁寧に実施した前立腺手術後、数年すると転移している事実を考えれば、前立腺針生検が癌細胞を前立腺の外にまき散らしていると考えた方が納得できます。
針生検で癌細胞を確認しないと、前立腺手術ができないという呪縛を一切払い、前立腺の硬結を触れれば前立腺癌と判断して前立腺手術を実施すれば、術後数年の再発・転移のリスクは現在よりも半減するでしょう。
ある意味、今のステージAの手術後の経過に近づくかも知れません。
しかし、針生検を実施しないで(癌細胞を確認しないで)、患者さんに前立腺癌と告知できるかどうかが、今後の問題ですし、泌尿器科医の勇気でもあります。
逆に、前立腺に硬結が触れて、それが癌でない確率の方が、はるかに少ないのですが・・・。

投稿: | 2010/03/04 14:23

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