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前立腺ガンとビタミンC療法

前立腺ガンの患者さんを何人か治療しています。
ホルモン治療でガンをコントロールしますが、中にはホルモン治療に抵抗するガンも存在します。

紹介する患者さんは、80歳の男性です。過去に他の医療機関で前立腺肥大症の内視鏡手術を実施しています。
腰骨が痛いということで近くの整形外科を受診したら、前立腺ガンの骨転移を疑われ、当院に紹介されました。


Pca18996m79bonescinti【患者さんの実際の骨シンチ画像】
前立腺腫瘍マーカーであるPSAが【544.5】と高値(正常が4.0以下)で骨シンチグラムで全身骨転移を認めました。左の腎臓は尿管が前立腺ガンでつぶされて全く機能していません。右の腎臓も水腎症の所見で、尿管が塞がりつつあります。
前立腺針生検【注】を実施し、病理結果は悪性度の高い(poorly differentiated adenocarcinoma)前立腺ガン細胞が認められました。グレソン・スコアが【5+5=10点】と悪い方に最高点でした。
グレソン・スコアを考慮すれば、予後は最悪です。治療に抵抗する可能性が高く、当然、周囲の臓器に浸潤し、転移するのは当たり前です。
【注】
針生検に関しては、私は消極的です。しかし、この患者さんのように、いわゆる末期の場合には予後確定に必要でしょう。

早速、ホルモン治療を開始しました。治療開始後1ヵ月でPSAは【192.7】と数値が下がり、骨の痛みも軽減しました。3ヵ月にⅠ回のホルモン注射(LH-RH)を継続しました。経過を追うためにPSAを定期的に測定するのですが、治療開始後3ヵ月後には期待に反して(グレソン・スコアからすれば予想通り)PSA【360.0】、その翌月には【507.0】と徐々に値が高くなり、ホルモン治療に可能性が見えなくなりました。ついにはPSA【745.5】までになり、このままの治療ではまったくコントロールできない状態です。


Psachange5患者さんが高齢なので思い切った治療ができません。そこで極少量(通常の4分の1)の抗がん剤の併用を試みましたが、服用1ヵ月後PSA【418.5】で若干反応がある?と喜んだのもつかの間、2ヵ月後に【485.0】と治療効果に期待が持てません。

こうなると、開業医レベルの治療では、もう手に負えない状態です。通常であれば、大学病院クラスの病院に紹介し、入院して積極的な化学療法(抗がん剤治療)を行わなければなりません。しかし、患者さんが全く乗り気ではありません。

Pcahyojoそこで代替療法では今流行りの「高濃度ビタミンC療法」を患者さんとご家族とに相談の上、開始です。高濃度ビタミンC療法の日本での権威である水上治先生から得た方法を少し変法にして治療することにしました。
毎週1回の点滴で大量のビタミンCを投与するという治療です。患者さんが80歳とご高齢ですから体に負担のかかる治療はできません。
この治療を続け2ヵ月後に検査を行いました。何と!PSAが【16.6】にまで減少したのです。患者さんも私もそのデータを知り元気になりました。ビタミンC恐るべし!『このまま効いてくれ!』

4ヵ月後【15.3】でホルモン治療は中止したにも関わらず、6ヵ月後【5.3】と着実に減少しています。

【治療によるPSA推移】
2008年 4月 544.5 
2008年 5月 192.7 ホルモン治療開始後
2008年 8月 360.0
2008年10月 507.0
2008年12月 745.5 
2009年 1月 418.5 ホルモン治療+抗がん剤治療開始後
2009年 2月 485.0 
2009年 4月 16.6 ホルモン治療+抗癌剤治療+VC治療開始後
2009年 6月 15.3 ホルモン治療中止、抗癌剤治療+VC治療
2009年 8月 5.3
2009年10月 4.6
2009年12月 4.6 すべての治療を中止
2010年1月 6.4 判断が甘かった! 治療再開
2010年3月 6.2

泌尿器科医がこのエピソードをご覧になれば、にわかには信じられないでしょう。私もそうだからです。ひとたび、ホルモン抵抗性を持った前立腺癌が治療経過中に再びホルモンに反応することは経験したことがありません。ましてビタミンCを併用したくらいで、これほどの効果があるなんて信じられません。
このままPSAが下がり続けるのであれば、7月に予定であったホルモン注射(LH-RHリュープリン注射)を中止することにしています。ビタミンC治療は、その単独治療だけでは効果が少ないとされています。ですから、ごく少量の抗癌剤治療は継続するつもりです。

ビタミンCは細胞内に取り込まれると、鉄イオンと反応して細胞毒性の強いスーパー・オキサイド活性酸素を造ります。このスーパー・オキサイドが癌細胞を駆逐するのです。すべての細胞に起こりえる現象ですが、なぜ癌細胞に顕著に反応するのか不明です。正常の細胞には、細胞内でビタミンCのこの反応を抑える仕組みがあり、癌細胞には抑える仕組みが欠落しているのかも知れません。あるいは、癌細胞は鉄イオンの吸収がよい(原初の頃の地球環境は鉄イオンが多く存在しました。癌細胞は未分化つまり先祖がえりした細胞ですから、太古の地球環境に順応する細胞に変化するのかも知れません。)ために、癌細胞内鉄イオン濃度が高くビタミンCとの反応効率が高いためにスーパー・オキサイドが生成されやすいのかも知れません。

過去にビタミンC治療は癌には効かないと、アメリカのメイヨー・クリニックで報告があってから、アメリカですたれたビタミンC治療です。しかし、メイヨー・クリニックのこの報告内容があまりにもいい加減(ビタミンCがはなから効く訳ないという主観が入り)であったので、ビタミンC治療が再認識されるようになりました。

ホルモン抵抗性再燃前立腺癌患者さんをかかえて悩まれている泌尿器科医の先生方、詳細をお教えしますから、ご連絡をどうぞ。来年には学会報告を行うつもりです。

Endstagecavc【参考】
末期癌患者さんの1日のビタミンC服用量による予後(生存率)の差

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コメント

高橋先生
はじめまして、名古屋の〇〇〇〇(49歳)と申します。
私も前立腺ガンが1月19日に発見され(D-2 骨転移、グレソン=8)PSAが1027でしたが、その後、病院で背骨に放射線を当て、リュープリンとカソデックスにて治療しました。(肝臓の数値が悪くなったためカソデックスは中止されています。)
発見後、2週間後から、別のクリニックでビタミン点滴(75g)を週2回と低用量抗ガン剤(ランダ5mg)併用温熱を週1回行ったところ、PSAが55まで下がりました。
今日、体がだるかったため病院にてを検査と診察を受けました。
結果、肝臓の数値が、以前より悪化していました。
その時、ビタミンC点滴のことを内科医に相談したところ、効果が期待できないので止めるよう指導されました。
この件につき、私自身、いま非常に悩んでいます。
このHPの患者さんは、その後いかがでしょうか?
【回答】
今も元気です。(写真は2010年1月当時のものです。)
発見したのが2008年4月ですから、今現在2010年3月の時点で、毎月1回ビタミンC50グラムの治療を実施しています。
現在PSAは4.6~6.4~6.2と推移しています。
骨シンチグラムで転移数は激減しましたが、未だ転移巣を認めることができますから、寛解状態と判断しています。
今年の4月の学会で報告する予定です。

新しい治療に嫌悪感を感じる医師はたくさん存在します。
無視して下さい。

併用する抗癌剤として、エストラサイトを点滴する数日前から毎日1錠(通常投与量、毎日4錠のところ)服用していただいています。エストラサイトとビタミンCとは相性が良いように思っています。

お大事に。』

突然のメールで申し訳ありません。
何卒宜しくお願いいたします。
〇〇〇〇

投稿: 〇〇 秀〇 | 2010/03/23 18:33

高橋先生
名古屋の〇〇です。
早速のご返事たいへんありがたく存じます。
それでは、本日もビタミンC点滴に行ってまいります。
少し落ち込んでいたのが、お陰様で回復いたしました。
重ね重ねの質問で申し訳ありませんが、このHPの方は、ビタミンCを経口で摂取されていますか?(何グラムをどのような方法で)お教えいただけましたら幸いです。
【回答】
この患者さんは酸っぱいと言って、なかなか服用してくれません。1日3グラム以下でしょう。
アメリカのデータによると癌患者さんに1日4グラム以下と5グラム以上とでは有為の差が認められたといいます。上のグラフをご覧下さい。
ビタミンC治療専門クリニックでは、1日10グラム(10,000ミリグラム)服用をすすめるそういです。


私は、米国製の長時間吸収タイプ1000mgを一日3~4錠摂取しております。
どうか今後とも宜しくお願いいたします。
〇〇 〇〇

投稿: 〇〇秀〇 | 2010/03/24 14:02

高橋先生
名古屋の〇〇です。
早速、ご回答いただきありがとうございました。
私は胃腸が弱いので厳しいですが、胃薬を工夫して5g以上摂取できるよう努めたいと思います。
本日、1か月半ぶりにエコーで見てもらったところ、前回ひだ状の腫瘍で影も形もなかった前立腺が、かなり縮小(石灰化?)していてハッキリとミカンの様な形に見えました。
画像を見てビックリしました。
転移先の骨も同様に改善されていくことを期待したいと思います。
どうか今後とも宜しくお願いいたします。


上記の名前:(任意)欄により実名が公開されていました。今後は抹消いたしたく存じます。

【回答】
気がついて、すでに実名は削除してあります。
もしも、貴方のパソコンで未だ実名が掲載されているとしたら、パソコン内のクッキーに記録されているからでしょう。
一度ウィンドウズ付属のアクセサリーソフトでパソコン内の不要なメモリーを掃除すると、消えている筈です。

私も注意して実名を匿名に変換していますが、たまに見逃すことがあります。
ブログやHP上のコメント記載のルールとして、すべて公開してもよいことになっています。
ですが、そのルールを知らずにコメントに不用意に実名を記載される方は、質問への回答の他に、実名を消去する余分な仕事を私に強いていることが理解されていません。

ルールを守りましょう。


投稿: | 2010/03/24 22:22

高橋先生
名古屋の○○です。
改めて画面を確認したところ、抹消されていました。
原因は、私の記入ミスのようです。
お手数をお掛けしました。

投稿: | 2010/03/27 09:46

高橋先生
名古屋の○○です。
当初、1027あったPSAが、何と!16.8まで下がっていました。(約50日の治療期間)
来月は、このHPの方のように早く、PSA一桁になることを期待して治療に励みたいと思います。
以上、ご報告申し上げます。
どうか今後とも宜しくお願いいたします。

【回答】
経過が良く、おめでとうございます。

投稿: | 2010/03/27 12:17

先日はお忙しい中、父(前立腺癌)をご診察して頂きありがとうございました。

上の患者様のその後の経過は如何ですか?父と共通するところがあり、大変興味があります。

同じく、他ページにもございますオゾン療法と、プラズマ療法にも興味があります。

次回、父と一緒に10月8日に伺いたく存じますが、これらは当日お願いしますと言ってすぐやって頂けるのでしょうか?予めお電話にて確認が必要でしょうか?

お忙しいところ大変申し訳ありません。
お手すきの時に、教えて頂けましたら幸いです。

投稿: ご相談 | 2013/09/22 23:09

初めまして、私、○○泰男と申します。現在大学病院で前立腺癌のホルモン療法を受けているものです。

PSA値は非常に高く、446でした。針生検では12ケ所で癌が見つかりました。骨シンチで骨への転移は認められませんでした。前立腺は異常に大きく、浸潤が見られると診断を受けて居ます。
一回目のホルモン療法によりPSAは139まで下がりましたが、何だかとても心配です。直ぐに抵抗性が起きるのではないかと、心配して居ます。

先生のブログにたどり着き、ビタミンCのこと読みました。それはともかく、一度診察をと希望して居ます。

大田区鵜の木在住 68歳 です。
【回答】
どうぞ、いらしてください。

投稿: 野菜党 | 2016/06/23 17:18

先生、先日はありがとうございました。先日大学病院で、二回目のホルモン療法を受けましたその時にPSA値は16.5まで下がりました。その間、ビタミンCを一日5000ミリグラム経口摂取して居ます。

3月20日に閉尿、その以前はずっと、ちょろちょろしかオシッコが出なかったのですが、この所は、勢いが増して来ました。

PSA100以上の前立癌は、去勢抵抗性となる時間が短いと聞いて居ます。しかし、今はこの王道の道で様子を見るしかないと思っております。ビタミンCのことは病院には伝えておりません。

日々は仕事に追われて居ます、まさに貧乏暇なし、頑張ります。

投稿: 野菜党 | 2016/07/20 22:02

食品を調べているうちに、
ビタミンCないし、クエン酸を含む
漬物を食べている人、
果物を食べている人、
酸味のあるソース、酢を食べている人
でなぜかリスクマイナスになっている
ことがわかりました。
これは、何か関係あるのでしょうか?
【回答】
疫学的調査結果からは、理由はわかりません。
あえて理由をあげれば、クエン酸、酢の物は体質をアルカリ性にします。
漬物は発酵食品ですから、腸内環境を改善してくれます。
結果、体質をアルカリ性にします。
ビタミンCは、それ自体、抗がん作用を持っています。

投稿: あらつき | 2016/10/21 02:07

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