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PSAと前立腺癌の関係

PSAが高い=前立腺癌と誤解されている医師、泌尿器科医がとても多いので、このページで解説しましょう。(資料:前立腺特異抗原PSA 医学図書出版株式会社から)

Psamecha本来PSAは、前立腺液の中に含まれる成分です。
正常な前立腺細胞であれば、腺腔の周囲を細胞が隙間なく整然と並んでいて、基底細胞層・基底膜が完全なので腺腔内の成分PSAが血管にに漏出することはありません。
しかし、腺腔を取り巻く細胞が前立腺癌であると、並び方が不ぞろいで、基底細胞層・基底膜が不完全なので、腺腔としての形態が壊れます。そのため、腺腔内の成分PSAが血管内にたくさん漏出するために、血液検査でPSAが高くなるのです。
PSAは前立腺癌特有な物質ではなく、前立腺内に多く含まれる物質であることがお分かりいただけたでしょう。

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前立腺ガンの検査・診断・治療

前立腺腫瘍マーカーであるPSAが少しでも高いと、猫も杓子もみんなそろうように前立腺針生検を行っています。その結果、前立腺癌の発見される患者さんが増え、PSA検査の価値が高まっています。PSA検査を健康診断のルーチン検査に入れているところも少なくありません。
GanpcaPSA検査による前立腺癌の早期発見患者さんが増加した結果、前立腺癌の治療方法が格段に進歩した昨今にも関わらず、なぜか前立腺癌で亡くなる方が右肩上がりに増加しています。まるで前立腺針生検の数だけ前立腺癌で亡くなる方が増加しているように思えてなりません。
この不思議な現象を以前に解説しました。むやみに前立腺針生検を行わない勇気も必要だとまで述べました。

前立腺癌は前立腺針生検によって、悪性度を増し転移や周囲の臓器に浸潤させてしまうのではないかと私は考えています。医学的常識で考えれば、癌の組織検査を実施し組織像を正確に把握してから治療するのが当たり前です。しかし、組織検査をすることで、ガン患者さんを窮地に陥れるのであれば、本末転倒です。

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前立腺肥大症と抗男性ホルモン剤

前立腺肥大症の治療の現在の主流は、α-ブロッカーです。商品名としては、ハルナールD、ユリーフ、フリバス、エブランチルなどがあります。
私が研修医のころの前立腺肥大症の治療は、プロスタールなどの抗男性ホルモン剤が主流でした。しかし、前立腺が小さくなり頻尿などの症状が軽減するまで、時間を要しました。また、性欲がなくなるなどの副作用もあったので、α-ブロッカーが出現し患者さんの症状が劇的に軽快した時の驚きは、今でも忘れません。
現在では、ほとんどの医療機関で、α-ブロッカーの治療一辺倒になってしまいました。これはこれで弊害が出るのです。いくらα-ブロッカーが前立腺や膀胱の平滑筋の緊張をゆるめてくれても、前立腺容積が大きい場合には前立腺肥大症の排尿障害には太刀打ちできません。
Prostal22988m73この写真は73歳の男性患者さんの超音波エコー検査の所見です。
夜間頻尿と陰嚢掻痒症で来院しました。前立腺容積を計算すると約100ccです。正常が20cc前後ですから、正常の5倍の体積を有しています。
こんなに大きくてはα-ブロッカー単独の治療では限界があります。患者さんは内視鏡手術を希望していましたが、私が行う日帰り手術では、大き過ぎて手術時間が長くなることと、出血のコントロールが難しくなるので、安全を期してとりあえずお断りしました。
その代わり、排尿障害治療薬であるα-ブロッカーと抗男性ホルモン剤の治療をしばらく行うことになりました。

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前立腺ガンとビタミンC療法

前立腺ガンの患者さんを何人か治療しています。
ホルモン治療でガンをコントロールしますが、中にはホルモン治療に抵抗するガンも存在します。

紹介する患者さんは、80歳の男性です。過去に他の医療機関で前立腺肥大症の内視鏡手術を実施しています。
腰骨が痛いということで近くの整形外科を受診したら、前立腺ガンの骨転移を疑われ、当院に紹介されました。


Pca18996m79bonescinti【患者さんの実際の骨シンチ画像】
前立腺腫瘍マーカーであるPSAが【544.5】と高値(正常が4.0以下)で骨シンチグラムで全身骨転移を認めました。左の腎臓は尿管が前立腺ガンでつぶされて全く機能していません。右の腎臓も水腎症の所見で、尿管が塞がりつつあります。
前立腺針生検【注】を実施し、病理結果は悪性度の高い(poorly differentiated adenocarcinoma)前立腺ガン細胞が認められました。グレソン・スコアが【5+5=10点】と悪い方に最高点でした。
グレソン・スコアを考慮すれば、予後は最悪です。治療に抵抗する可能性が高く、当然、周囲の臓器に浸潤し、転移するのは当たり前です。
【注】
針生検に関しては、私は消極的です。しかし、この患者さんのように、いわゆる末期の場合には予後確定に必要でしょう。

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