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前立腺肥大症の構造解析による分類

Bphtype0【機能性膀胱頚部硬化症または正常所見】
臨床現場では前立腺肥大症を大きさだけで分類しているのが今の現状です。
このような分類だと、前立腺の大きい患者さんだけが、めでたく「前立腺肥大症」と診断されますが、前立腺の小さい患者さんは「気のせい」「慢性前立腺炎」と診断されるのが落ちです。
排尿障害の成り立ちを深く理解すれば、前立腺肥大症の全貌が見えてくる筈です。
上のイラストは、前立腺をほぼ側面から観察した状態を示しています。2D画像で観察できる所見です。このような状態は、まったく正常か、あるいは機能性膀胱頚部硬化症であるかです。異常があっても形態学的異常が出現しなければわかりません。前立腺の大きさは15cc前後でです。

Bphtype1【狭い意味での純粋な前立腺肥大症】
膀胱頚部の能力が正常であって、前立腺が前立腺肥大症に変化した場合をイラストで示しまず。
このような前立腺肥大症は、排尿障害があっても前立腺肥大症の大きさに完全依存するので、思ったより症状が軽いのがこのタイプです。前立腺肥大症の排尿障害改善剤(ハルナール・ユリーフ)が効くタイプです。また、抗男性ホルモン剤(プロスタール)が効くタイプでもあります。

Bphtype2【器質性膀胱頚部硬化症】
機能性膀胱頚部硬化症から器質性膀胱頚部硬化症に進行し、形態学的にも変化が現れた場合のイラストです。
前立腺の大きさは正常(18cc前後)ですが、排尿障害が強く出ます。超音波2D画像では、膀胱三画部の肥厚所見が唯一つ手掛かりになります。「非細菌性慢性前立腺炎」と誤診されるのが、このタイプです。

Bphtype3【膀胱頚部硬化症+前立腺肥大症】
上記の状態に前立腺肥大症が加わると、前立腺が膀胱出口から膀胱内に進入するようになります。
しかし、直腸診で触れる前立腺は一部なので、正常と誤診されます。また、泌尿器科医が好んで実施する、経直腸式の超音波検査は、前立腺のみをターゲットにしていて、膀胱との位置関係を無視するので排尿障害を診断することができないのです。前立腺の大きさは20cc~25ccです。
このタイプも「非細菌性慢性前立腺炎」と誤診される可能性が高いタイプです。

Bphtype4【膀胱頚部硬化症+前立腺肥大症の進行(腺型の単独)】
上記のイラストからさらに進行すると、右のイラストになります。
前立腺の膀胱内への侵入・突出は著しい状態です。
膀胱出口の膀胱括約筋は、前立腺の侵入で周囲に団子状に変形し、もうこれ以上二進も三進も(にっちもさっちも)いかないくらいになっています。そのため膀胱括約筋は、弛緩することも収縮することもできずに、絶対的静止状態に陥り、排尿障害が強く出ます。ある意味、前立腺が膀胱出口に締め付けられている格好です。
超音波検査を実施すれば、容易に診断できますが、直腸診だけでは前立腺が大きく触れることが少ないので、「慢性前立腺炎」「過活動膀胱」と誤診されます。前立腺の大きさは30cc前後か、それ以上です。

Bphtype5【膀胱頚部硬化症+前立腺肥大症の進行(腺型と筋型の混在)】
前立腺の移行部からは線維筋性過形成と称する硬い前立腺肥大症が発生します。
これが前立腺部の尿道を取り囲む形になるので、排尿障害は一層強調されます。

構造解析により分類はしましたが、各タイプ間の中間的な形態も存在しますから、この通りだけではありません。いつもいろいろ考えています。現場で「フッ」と啓示されることもあります。そんな時に新しい理論が生まれますから、お楽しみに。

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コメント

こんにちわ。
先日の記事で、α1遮断薬のハルナールとフリバスが効くサブタイプが異なるとかかれてましたが、両方を併用することはありますか?

高橋クリニックからの回答
保険診療では、併用できません。
どちらかを自費で購入できれば、可能でしょう。
医学的には併用しても不思議ではありません。

投稿: A・S | 2009/03/25 20:58

お忙しい中、返答ありがとうございます。
併用したら片方が保険で切られてしまうのですね、、
先生の記事をみて、前立腺のお薬は奥が深いと感じました。これからも楽しみに拝見させていただきます。

投稿: A.S | 2009/03/25 23:34

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