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前立腺肥大症とノコギリヤシ

前立腺肥大症にノコギリヤシ(saw palmetto)は無効という文献がありました。
参考までにご覧下さい。
内容的には、今流行のノコギリヤシを飲んでも、尿流量測定ウロフロメトリー検査では変化がなかったという結果です。しかし、尿流量測定ウロフロメトリー検査の結果はあくまでも尿の勢いとしての外見上の結果であって、その結果を出すのに膀胱や前立腺への負荷がどのくらいかという内面的な結果は分からないのです。
例えると、白鳥が湖面を滑るようにスーッと泳いでいます。白鳥が水面下で足の一漕ぎでスーッとなのか、十漕ぎでスーッとなのかは外見上では判断できないのと同じです。一漕ぎでスーッとの方が効率がよく楽に滑っていることになります。
ノコギリヤシを飲まれた前立腺肥大症の患者さんも、尿流量測定ウロフロメトリー検査では変化がないかも知れませんが、楽に排尿しているのであれば、頻尿や残尿感などの症状は軽減する筈です。
この文献の短絡的な誤解と評価のように、検査結果は往々にして表面的なことしか判断できないことがあります。一つの検査がその病気の全てを完璧に評価している訳ではないことを充分に知るべきです。臨床治験を行なう場合、浅はかな医師が治験のプロトコールを作成すると往々にしてしょうもない文献が出来上がってしまいます。ところが、EBM(文献的証拠・エビデンスに基づく医療)を唱える一握りの医師たちは(本人たちは大多数と思っているらしいのですが・・・)、このような本質を見抜けず、ただひたすら文献的証拠!文献的証拠!と声高に唱えるので、医学の常識を乱し、結局は患者さんを混乱させてしまいます。

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