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尿閉(にょうへい)

小さな前立腺肥大症」という診断で内服治療受けていた患者さんが来院しました。「トイレ便器の前で構えていてもオシッコがなかなか出てこない」「夜トイレで6回起きる」というのが患者さんの訴えです。
近くの総合病院で3ヶ月前から、バップフォ(頻尿改善剤)、アビショット(排尿障害改善剤)、パーセリン(前立腺肥大症治療薬)を服用しているのですが全く改善しません。お腹が張って苦しいので前立腺肥大症の手術を希望したのですが、大きくないので手術する必要がないと全くとり合ってくれません。仕方が無く高橋クリニックに来院したのでした。

18756m71bns超音波エコー検査で前立腺の大きさを検査しようと、お腹を露出していただいたら、ご覧のようにお腹がパンパンです。患者さんは10分前に排尿したと言いますが、膀胱に尿が緊満した状態に違いありません。超音波エコー検査で確認すると、胃の位置まで膀胱が膨らんでいます。

18756m71bns3患者さんに十分に説明して、膀胱カテーテルを留置することにしました。そして溜まっていた尿を全部吸引しました。抜いた後はご覧のようにお腹はペチャンコです。

18756m71bns4カテーテルを挿入して1リットル吸引した直後の超音波エコー検査の所見です。膀胱尿がまだ1リットル以上残っています。

18756m71bns2採尿した尿量は何と!2350mlでした。2リットル以上の尿で膀胱が膨らんでいたのでした。こんな状態にもかかわらず、総合病院の泌尿器科医は積極的な治療をしようとはしなかったのです。患者さんに話を聞くと、昨日、パンパンになったお腹も見せ、超音波エコー検査で「尿が残っているね?」と説明しただけで何にも処置をしませんでした。

今まで診ていてくれた総合病院の泌尿器科に行き、尿閉で近所の開業医に尿を抜いてもらったエピソードを説明して、手術してもらいなさいと指示しました。泌尿器科医の世界では、一度でも尿閉になった場合は、手術適応ありと判断するのが常識だからです。
翌々日患者さんが来院しました。何と!「様子をみましょう」と言われたというのです。同じ泌尿器科医として情けない!未だに前立腺肥大症=大きな前立腺という誤解があり、排尿障害で悩んでおられる患者さんが被害者になるのです。前立腺が大きくなく排尿障害になる病気として、前立腺中葉肥大・膀胱頚部硬化症があります。大きさだけで前立腺を云々する泌尿器科医には注意しましょう。

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