休診のお知らせ

【休診日】
12月30日~1月4日休診です。
仕事納め:12月29日(土曜日)
仕事始め: 1月5日(土曜日)

1月12日(土)は臨時休診です。

【診療時間】

月曜日〜土曜日: 午前中9時~12時診療を行います。
ただし、火曜日・木曜日のみ、午後4時〜午後6時も診療を行います。

| | コメント (12)

膀胱・直腸の違いで分かる病気の本質

膀胱と直腸は、元々は同じ臓器だったのです。
以前にも、膀胱の発生学的構造について解説しました。そこでおさらいです。

Bladrect_2
まずは、胎児の4週の時点で、膀胱の基礎が出来上がります。それが、「総排泄腔」です。その形はとてもシンプルです。総排泄腔の前に「へその緒」が繋がっています。総排泄腔の前後の真ん中辺りにクビレが生じます。これを「尿直腸中隔」と呼びます。イラストでは「中隔」と示しています。
胎児の6週に成ると中隔というクビレがドンドン深くなっていきます。深くなるに連れ、総排泄腔の前は膀胱に、背後は直腸になろうと変形します。つまり、膀胱と直腸は、発生の途中では同じ臓器だったのです。ですから、出産後に成長して成人になれば、別の臓器と思われますが、神経的には脊髄神経で繋がっている方もおられます。その証拠に、膀胱炎になると便意を催すヒトもいれば、下痢すると頻尿になるヒトも存在します。
胎児の7週に成ると、尿直腸中隔は完成して膀胱と直腸は完全に分離独立します。膀胱の末端は、体壁皮膚の外側まで通過して「尿道」になります。胎児の11週には男性の場合は、この尿道から芽が出て、それが「前立腺」になります。背後の直腸は、大腸(S字結腸)の末端と接続して、大腸は直腸まで連続します。

ここまで見ると、膀胱も直腸も、ほぼほぼ同じ臓器です。何が違うかと言うと、膀胱は腎臓・尿管と繋がり尿を溜め排泄し、直腸は消化器官末端の大腸と繋がって大便の通り道です。尿管の粘膜細胞である移行上皮が膀胱の粘膜として広がり、大腸の粘膜細胞の円柱上皮が広がり直腸の粘膜になるのです。最初は同じ臓器なのに、粘膜細胞は異なるのです。
さて、ここで疑問が生じます。オシッコが出なくなる「神経因性膀胱」の原因は、膀胱の力が無くなったから尿が出なくなると言われています。しかし、直腸の力が無くなったから大便が出なくなる病気は存在しません。もともと直腸には、そのような力がある構造でもなく、大便の塊を腹圧をかけて押し出す際に、便意を感じてチョコっと力を補助するだけです。直腸の筋肉はただ単に蠕動(ぜんどう)運動するだけです。膀胱もほぼ同じで、尿を溜める時に膨らみ、尿を出す時に一滴も残らず閉じるだけの力があればよく、肝心の排出力は腹圧をかけて尿が出るだけです。ではどうして、「神経因性膀胱」という病気で尿が出なくなるのでしょうか。それは、生まれは同じ双子の臓器ですが、膀胱出口の構造が直腸の出口よりもシンプルではないからです。

Brr_2
ここで、先ず直腸の出口=肛門の仕組みを見てみましょう。内〇〇括約筋と外〇〇括約筋が隣り合わせで接しています。排便の際には、外〇〇括約筋が開きますが、内〇〇括約筋は軽く収縮します。なぜなら、直腸の縦走筋と協力して、直腸を漏斗状に姿を変えて大便が出やすくするのです。ここで容易に分かることは、内〇〇括約筋が頑張っても骨格筋である外〇〇括約筋には負けてしまうので肛門は容易に開くのです。

Brb
直腸と比較すると、膀胱の出口は少し複雑です。
内〇〇括約筋と外〇〇括約筋が上下に位置しているのです。
排泄物が液体の膀胱の場合は、直腸と同じに隣接していると、尿が漏れ出てしまうからです。しかし、排尿時は、直腸と同じ動きをします。外〇〇括約筋が開こうとすると、内〇〇括約筋が収縮して同時に膀胱縦走筋が収縮します。その相互作用で膀胱の頸部は漏斗状に姿を変えて排尿しやすくなります。
ところが、直腸と違い、内と外〇〇括約筋が上下に位置していて、外〇〇括約筋の力が内〇〇括約筋に十分な伝わりません。そのため、微妙なバランスで内〇〇括約筋が開くことになります。もしも、このバランスが乱れれば、内〇〇括約筋は十分に開かず、排尿障害になるのです。

つまり、直腸は内〇〇括約筋と外〇〇括約筋が並行に位置し、膀胱は内〇〇括約筋と外〇〇括約筋が縦に位置しているのです。力の強さは、骨格筋・随意筋である外〇〇括約筋の方が、内臓筋・不随意筋である内〇〇括約筋よりもはるかに強いのです。ですから、並行に並んでいる直腸の場合は、内〇〇括約筋は外〇〇括約筋の言いなりです。そのため、外〇〇括約筋が開くと内〇〇括約筋が容易に開いてしまうのです。しかし、ある程度の距離を置いて縦に並んだ膀胱の場合は、内〇〇括約筋が自己主張するので、外〇〇括約筋の言いなりにならないのです。その程度は、歳を重ねるごとに強くなり、また男性の場合は前立腺が大きくなるほどに強くなるのです。

便秘などの大便の出が悪いのは、大便の固さに問題があるのです。しかし尿は液体ですから、出の悪さは膀胱出口の開閉だけに依存しています。内尿道括約筋(膀胱括約筋)と外尿道括約筋の連携プレイが問題になるのです。神経因性膀胱は膀胱全体の筋肉の力がないからと言うのは「嘘」です。『治らないんだ😞』と詐欺被害者になってしまいます。騙されてガッカリしないでください。ですから、神経因性膀胱などの治療には、内尿道括約筋を緩める薬や手術で内尿道括約筋をカットしてあげればいいのです。

| | コメント (0)

前立腺ガンを2年間放置…その結果…

Pca34801m57pp
3年前の平成28年7月にPSA値8.31と高くて来院した50歳代の男性患者さんのエピソードです。

触診とエコー検査で前立腺の右葉に前立腺ガンが確認できました。私オリジナルの穏やかな治療を開始しました。5ヶ月経過すると、エコー検査でも触診でも、ほとんど確認ができないほど前立腺ガンは小さくなりました。その患者さんは、埼玉から通院していましたが、家庭の事情で九州に転居することになりました。

Pca34801m572pp
遠方の患者さんには、お薬を着払いでお送りすることはできますから、そのようにお話しをしていました。
ところが、この患者さんは、転居の前後である本を読み、「癌は何もしないで自然に任せるべきだ」という内容に感銘を受けて、お薬を止め治療を何の相談もなく中止してしまったのです。せっかく治療効果が得られたのに…私からしてみれば、顔にドロを塗られた思いです。その後、2年余り何もせずに前立腺ガンを放置してしまったのです。
ところが、最近になって健診で内科の医師がPSA検査したところ、PSA値が57を超えるほど高くなってしまいました。地元の泌尿器科を受診したら、このまま何もしないでいると、苦しんで死ぬと脅され、気持ちが不安定になりました

早速、エコー検査を行うと、写真の如く前立腺の堅い被膜(白点線)から直腸側に前立腺ガンの陰影が突出しています。触診でも、明らかに硬い前立腺ガンが突出していました。
前立腺ガンの明らかな悪化・進行・侵攻です。
この患者さんに、次のように説明しました。
❶初診時に前立腺ガンとお話ししました。
❷治療により前立腺ガンが激減したことは確認しましたね?
❸しかし、貴方は読んだ本の影響を受け、ガンの積極的な治療をしないで、自然経過を選択した。
❹治療を中止すれば、再発・悪化のリスクが高くなるのは、常識的に当然です。
❺現実、現在の貴方の前立腺ガンは大きくなり、前立腺の被膜を超えて、ステージⅡ→ステージⅢ以上に悪化しています。それがPSA値57です。
❻読んだ本の影響で「何もしない」と決めたのなら、男らしく自分の判断を貫きなさい。一度決めたことは貫きなさい!地元の医師の言葉くらいで動揺するな!
❼今後の治療は、するしないは別として、地元の医師と十分相談しなさい。

ある意味でドクハラ・ドクターハラスメントかもしれませんが、以上のようにアドバイスをしました。
そして、言葉少なくお帰りになりました。自分の人生ですから、患者さんも私も自分の意志を通すべきです。


| | コメント (3)

膀胱の構造から考えた治療の選択肢

Lutstherapy
慢性前立腺炎や間質性膀胱炎などの下部尿路症の主な原因は、患者さん本人が気付いていない排尿障害です。
機能性排尿障害が、膀胱括約筋を肥厚させ、さらに強い器質性の排尿障害になります。
それと同時に膀胱三角部が肥厚・過敏になります。
膀胱出口の膀胱括約筋と膀胱三角部が肥厚して排尿障害が強くなるため、膀胱体部にも負担が掛かります。
膀胱括約筋のスイッチである受容体は、α1受容体ですから、治療薬はα1ブロッカーのユリーフ、ハルナール、フリバスです。
膀胱三角部のスイッチである受容体は、β3受容体ですから治療薬はβ3作動薬であるベタニスです。
膀胱体部のスイッチである受容体は、ムスカリン受容体ですから、治療薬は抗コリン剤のベシケアなどです。
下部尿路(膀胱・前立腺・尿道)の慢性的病気は、この膀胱括約筋と膀胱三角部と膀胱体部の三つ巴で作られる症状です。ですから、α1ブロッカーとβ3作動薬と抗コリン剤の3つを駆使すればいいのです。

Recepter3type
ところが、この理論で治療しても、すべての患者さんがスッキリ、ピッタリと治る訳ではありません。
なぜなら、平滑筋に作用するスイッチである受容体は、万人が常に均一均等に配分している訳ではないからです。膀胱括約筋=α1受容体、膀胱三角部=β3受容体、膀胱体部=ムスカリン受容体とデジタルにキッチリと配分しているとは限りません。
イラストのグラフで示すように、人によって、受容体の分布配分が様々です。
私なら、まずはα1ブロッカーを投与します。早めに結果を出す時や患者さんの症状が強い際には、β3作動薬を併用します。この処方で大方8割の患者さんは症状が軽快します。
一部の患者さんでは、効果がイマイチの場合があります。その場合には、α1ブロッカーの種類を変えるか、抗コリン剤を併用します。

| | コメント (0)

排尿障害が原因のいろいろな病気

医師になって約40年(正確には39年)、それまで蓄積した臨床体験から、一見、排尿障害と無関係に思える病気の原因が、排尿障害と密接に関係している事が分かりました。
原因を分かりにくくしているのが、膀胱や前立腺を神経支配している、脊髄神経回路だったのです。
Lutsgroup
脊髄神経回路は、人によってさまさまな症状を作ります。医師は、その神経回路の様子を想像出来ませんから、たくさんの原因不明の病気を創るのです。その発想の貧弱さが、結局は患者さんたちを苦しめて来たのです。

①排尿「機能障害」→膀胱括約筋の肥大・膀胱三角部の過敏

②膀胱括約筋の肥大→排尿障害の悪化→前立腺に負担→前立腺肥大症→排尿障害がさらに悪化

③前立腺に負担→PSA値の上昇→前立腺癌を疑われる→前立腺針生検

④膀胱に負担→膀胱の疲弊→膀胱の弛緩→神経因性膀胱→治らない病気と誤解

⑤膀胱の疲弊→膀胱の萎縮→間質性膀胱炎→水圧拡張術→さらに萎縮が進む

⑥膀胱三角部の過敏→神経回路の興奮→❶慢性前立腺炎❷慢性膀胱炎❸過活動膀胱❹膀胱疼痛症❺慢性骨盤疼痛症候群❻線維筋痛症❼舌痛症❽慢性胃痛症❾幻臭症➓坐骨神経痛→気のせいと誤解

| | コメント (0)

新たなβ3作動薬

Beova
近々、新たなβ3作動薬が販売されることになりました。
キッセイ薬品と杏林製薬の併売です。これまでは、アステラス製薬のβ3作動薬のベタニスしかありませんでした。ベタニスも画期的なクスリでしたが、全ての人に均一に効果があるとは限りませんでした。
治療する側の医師としては、下部尿路症の患者さんにいろいろなお薬で治療しますが、その人に合う薬を見つけるのが大変です。少しでも選択肢が増えると、医師も助かるし、患者さんにとっても有益です。

これまで、ベタニスの効果が得られなかった人や副作用のために中止された人にとっては、朗報です。

| | コメント (0)

尿意の秘密

Oabnyoi
膀胱や前立腺の数々の病気を調べ研究して治療するに当たって、基本的な概念を明らかにする必要があります。その対象が「尿意」です。
泌尿器科学会で名だたる先生たちが唱える、尿意のメカニズムは次のようです。
まずは、膀胱の基本的構造をイラストで示しました。膀胱粘膜があり、その下に粘膜下組織、平滑筋層、神経組織のC線維があります。
Oabnyoi2
①オシッコがたまり膀胱が膨らむと、当然、膀胱粘膜が引き伸ばされます。
②すると、膀胱粘膜からATPやアセチルコリンなどのさまざまな「生物活性物質」が放出されます。
③それら生物活性物質が膀胱粘膜のすぐ下に存在するC線維を刺激して、それが脊髄神経回路に伝達されて尿意になるのです。
Oabnyoi3
もしも、この通りだとすると、説明できない現象があります。
頻尿や尿意切迫感を抑えるβ3作動薬のベタニスや抗コリン剤のベシケア・ステーブラ・トビエースなどは、膀胱の平滑筋を緩める働きがあります。そのお陰で、頻尿や尿意切迫感の患者さんが、オシッコを我慢できるようになるのです。しかし、もしそうだとしたら、平滑筋が緩み、膀胱がさらに膨らみ、膀胱の粘膜はなお一層伸びて、生物活性物質が大量に放出される筈です、すると、頻尿の尿意切迫感が強くならなければなりません。したがって、この理論は、間違いです。
Oabnyoi4
では、どのように考えればいいのでしようか?
ヒントは、β3作動薬や抗コリン剤が平滑筋にしか効かないことにあります。そして、平滑筋を緩める=尿意が低下する点にあります。平滑筋細胞は、細胞間が電気結合=ギャップ結合で繋がっていて、1個の細胞の情報がすべての細胞に伝わります。つまり、1個の細胞の意識が、すべての細胞の共通の意識になるのです。膀胱が膨らむと、平滑筋は引き伸ばされて緊張(赤いギザギザ線)し、平滑筋全体に伝達されます。その緊張情報=膀胱内圧=尿意情報が神経に伝達されて尿意になるのです。この仕組みは、ほぼ神経細胞と一緒です。神経は線状なので1次元ですが、平滑筋は立体的なので3次元です。膀胱平滑筋は、収縮と弛緩する物理的な動力装置としての働きと、機能的な感覚センサーとしての働きがあるのです。

実は平滑筋には他にも違う働きがいろいろあります。動脈壁の中膜にある平滑筋は、動脈壁の内膜に溜まった悪玉コレステロールを食べて泡沫細胞になります。これはマクロファージ=貪食細胞と同じです。また、動脈壁の内膜に集まった泡沫細胞を固めるために平滑筋がコラーゲンを作ります。これは線維芽細胞と同じです。

以上のように平滑筋には、多彩な能力があるのです。その平滑筋には、私たちが知らない能力があるかもしれません。その不明の能力が原因不明の病気に関与しているかもしれません。そういう意味では、平滑筋の興奮を抑える大豆イソフラボンが、さまざまな病気の予防に役立つ可能性があります。

| | コメント (0)

誤解

Lutsmap2
今まで解説してきた下部尿路症は、基本的考え方は恐らくこうでしょう。

①前立腺肥大症は、前立腺肥大症が膀胱を刺激して、頻尿・残尿感・尿意切迫感が出現する。前立腺の手術をしても治らない人がいる。
②急性膀胱炎は、バイ菌が刺激して、膀胱粘膜が過敏に反応して、頻尿・残尿感が出る。若いご婦人のこの病気はセックスの後に起こる。しかし、高齢者の場合は原因不明である。
③慢性前立腺炎は、前立腺の炎症が膀胱を刺激して、頻尿・排尿痛・陰部の痛みが出る。抗菌剤を長期間投与しても治らない。
④間質性膀胱炎は、膀胱の粘膜に原因不明の炎症が起きで、頻尿・膀胱の強い痛みになる。萎縮した膀胱を水圧拡張しても治らない。
⑤過活動膀胱は、原因不明で頻尿・尿意切迫感・切迫性尿失禁になる。
⑥膀胱疼痛症候群は、原因不明で軽い頻尿程度がある程度、主症状は排尿に関係なく膀胱の痛み。麻薬の痛み止めを服用しても治らない。

結局は、すべての病気の原因を膀胱が受け止めて、下部尿路症状を作っているのだろうという考え方です。その割には、原因と思われる病態を治療してもなかなか治りません。さらに原因が別としても、膀胱は同じですから、同じ症状でもいいと考えられませんか?何故いろいろと違う症状なのでしょう。明らかな膀胱粘膜の炎症である細菌性急性膀胱炎と同じ頻尿・残尿感・排尿痛にならないのでしょう?……どうしてでしょうか?
Lutsmap
これには、理由があるのです。
前回解説したように、疫学的調査で症状を比較すると、尿勢低下のみが「機能障害」です。一般的に、病気の症状は、機能障害が原因で、その他の症状を作っていると考えられます。機能障害で排尿時に膀胱括約筋と膀胱三角部が弛緩しないため、膀胱出口が開かないために排尿障害になります。弛緩しない膀胱括約筋と膀胱三角部は、縦走筋と力比べするために、膀胱括約筋・膀胱三角部が肥大化・肥厚化し、ますます排尿障害を悪化します。
①排尿障害が悪化すると、
ⅰ.膀胱内圧のエネルギーが、長期間前立腺を刺激したため、前立腺が対応反応して肥大化→「前立腺肥大症」になる。
ⅱ.膀胱内圧が長期間に渡って上昇するので、膀胱自身が疲弊する。疲弊の結果、
a)膀胱が弛緩する→「神経因性膀胱」
b)膀胱が萎縮する→「間質性膀胱炎」

さらに膀胱三角部は尿意を知覚するセンサーですから、肥厚化によって尿意エネルギーは大量に産生されるために、脊髄神経回路を介して、頻尿・残尿感・尿意切迫感・切迫性尿失禁・膀胱の痛み・陰部の痛み・シビレ・痒みになるのです。
①男性で不定愁訴があって、前立腺が大きくないと、→「慢性前立腺炎」
②尿検査で白血球/細菌が見つかると、→「慢性膀胱炎」
③検査結果がほぼ正常で精神的に落ち込むと、→「心因性頻尿」
④検査結果が多少異常があっても、痛みがとても強いと、→「膀胱疼痛症」
⑤痛みの領域が広いと、→「慢性骨盤疼痛症候群」
⑥検査結果がほぼ正常だと、→「過活動膀胱」

ご覧のように、下部尿路症で付けられた診断名の根拠が、如何にいい加減か分かります。診断名から治療しても、病気が治るとは思えません。診断名を考案した医師たちの短絡的な発想が情け無い。表向きの症状だけで病名を作るのは、素人でも作れることです。
イラストで示すように、病気の根本的原因は、排尿障害と膀胱括約筋・膀胱三角部の肥大化と異常興奮が原因です。そのために、排尿障害の治療薬であるα1ブロッカーと、膀胱三角部の興奮を抑えるβ3作動薬と抗コリン剤が必要になるのです。

| | コメント (0)

下部尿路症のいろいろ

Lutsimage_2
「下部尿路症」には、次のようないろいろな病気があります。
①前立腺肥大症
前立腺が大きいから頻尿になる。
でも、手術で前立腺を除去しても、頻尿が治らない患者さんが存在する。「歳のせい」にされる。
②急性膀胱炎
バイ菌が原因で膀胱粘膜が炎症を起こし頻尿になる。頻尿=炎症?=バイ菌と単純に思われる。
③慢性膀胱炎
バイ菌はいないのに、繰り返し膀胱炎症状の頻尿になる。頻尿=炎症?=見つからないバイ菌=不潔にしている
④過活動膀胱
バイ菌も明確な原因もなく、頻尿になる。ダメな膀胱
⑤間質性膀胱炎
膀胱粘膜下の間質に炎症所見が認められる。バイ菌はいない。アレルギーが原因と思われている。頻尿と痛みが併発する。
⑥膀胱疼痛症
バイ菌はいない、膀胱粘膜に炎症もない。頻尿±ただ痛みが前面に出る。
⑦非細菌性慢性前立腺炎
前立腺に明確な原因もなく、頻尿や痛みが出る。只ひたすらに抗生剤とセルニルトンを処方するだけ。
⑧慢性骨盤疼痛症候群
男女問わず、原因不明で痛み±頻尿で苦しむ。
⑨神経因性膀胱
排尿直後にもかかわらず、残尿が50㎖以上も残っている。そして頻尿±残尿感±不快感が出る。原因は膀胱の神経がダメになった➡︎治せない。
⑩前立腺がんの手術後の頻尿
手術前には、なかった頻尿が手術後から頻繁に出る。主治医は、手術の後遺症だからと言って、何もしてくれない。理由は、膀胱と尿道を接合縫合する際に、膀胱三角部を縫ったからです。

以上の病気の原因はいろいろだったり、不明ですが、症状は似たり寄ったりの頻尿・残尿感・尿意切迫感です。しかし同じような症状なのに、症状を作る明確な原因が突き止められていません。何となく膀胱が過敏になっているから、という対症療法で済ませるので、すべての病気をいい加減にしか治せないのです。こんな事で、よく偉そうに泌尿器科学会を専門医がリードしていますよね?

Oabepi
これらの下部尿路症の患者さんのいろいろな症状のうち、ある一定の確率で尿勢低下=排尿機能障害を認めます。機能障害が病気の原因で、膀胱を苦しめていると考えるべきです。治療としては、排尿機能障害を中心にα1ブロッカーであるユリーフ・ハルナール・フリバスを処方して、膀胱三角部の過敏反応を抑えるために、β3作動薬のベタニスと、抗コリン剤であるベシケア・ステーブラ・トビエースを処方します。
世間では、頻尿や尿意切迫感だけに振り回されて、原因を追求せずに、β3作動薬や抗コリン剤だけを処方しています。もちろん、それだけでも症状が落ち着く患者さんもおられますが、繰り返し症状は出てきて、次第に治療が困難になるほど症状が強くなります。なぜなら、患者さんの脊髄神経回路がバージョンアップするからです。そして、過活動膀胱➡︎間質性膀胱炎➡︎膀胱疼痛症➡︎慢性骨盤疼痛症候群という表面的な病名に診断されてしまうのです。そも病名に流れる根底には、ただ一つ「排尿障害」があるのです。

| | コメント (0)

毎日新聞の記事から PSA検査と前立腺がん

患者さんからのご連絡で、毎日新聞の記事に私の考えと合致する内容の記事が掲載されたそうです。ご紹介ありがとうございます。
下記にその記事を要約しました。
詳細は下記のサイトをご覧ください。

毎日新聞


Mainichinews
高齢男性に多い前立腺がん。早く見つければ治療後の見通しは良いが、一般に病状の進行は緩やかなため、不利益も伴う治療をすべきか悩ましいところだ。2回目は、前立腺がんの早期発見に役立つPSA検査についてまとめた。【渡辺諒】

死亡率低下、証拠不十分 病状進行遅く、効果不透明
 長野県安曇野市の無職、工藤元彦さん(77)は約10年前に受けたPSA検査と、その後の精密検査を後悔し続けている。きっかけは夏風邪。2~3週間たっても治らず、市販の風邪薬を飲むと尿が出なくなり、救急病院へ。そこで受けたPSA検査で「異常」と出た。

 この検査は、前立腺がんの可能性を調べる検診の一種で、……。国立がん研究センターによると、がんや炎症で前立腺の組織が壊れると、PSAと呼ばれる特異なたんぱく質(腫瘍マーカー)が血液中に漏れ出てくる。PSAの血中濃度が1ミリリットル当たり0~4ナノグラム(ナノは10億分の1)は正常だが、同4~10ナノグラムだと25~40%の割合でがんが見つかる。……。

 PSA検査の結果を知った工藤さんは、前立腺12カ所に針を刺し、組織を採って調べる精密検査(針生検)を受けた。すると、1カ所からがん細胞が見つかり、医師から手術か放射線治療、PSAの値を定期的に調べる監視療法のいずれかを勧められた。「手術を選んだ友人が尿漏れに苦しんでいる」「前立腺がんは成長が遅い」ことを思い出し、工藤さんは結局、監視療法を選んだ。

 その後、少しずつPSAの値が上昇し、腰痛にも悩まされるように。「前立腺がんは骨に転移しやすい」と聞いたため、病院で磁気共鳴画像化装置(MRI)を使用した画像検査を繰り返し受けたが、がんは前立腺にとどまったまま。工藤さんは「結局、尿が出なくなったのもがんと関係がなかった。高齢者は早期にがんを発見して心配するよりも、知らずに過ごした方が精神的に健康だ」と話す。

早期の発見には有用
 PSA検査は、複数ある腫瘍マーカーのうち、「前立腺がんを早期発見するのに最も有用」(同センター)という。日本泌尿器科学会はガイドライン(指針)で、50代から受けるよう勧めている。学会の代議員で、黒沢病院(群馬県高崎市)の伊藤一人院長は「検査で前立腺がんの死亡率が下がったというデータもあり、一度は受けておくべきだ」と強調する。……。

 一方、問題は、早期発見による利益と不利益のバランスだ。米国予防医学専門委員会によると、55歳以上で自覚症状のない1000人がPSA検査を受けた場合、異常値となった240人のうち精密検査で100人にがんが見つかるが、前立腺がんによる死亡を避けられるのは1~2人。60人以上は……医療行為などによって、尿失禁や勃起不全の合併症を経験する。前立腺がんは進行が比較的遅く、寿命に影響しないことも多い……不利益が利益を上回るケースもある。

 過剰医療をなくそうと70以上もの専門学会が参加している米国のキャンペーン「Choosing Wisely」(賢い選択)でも、米国泌尿器科学会が「リスクについて医師と話し合った後に検査を検討すべきで、日常的に受けるべきではない」と呼び掛けている。米国ではPSA検査について、医師と患者が対等に話し合い、結果についての責任も両者が負う「シェアード・ディシジョン・メイキング」という考え方が浸透している。大阪大の祖父江友孝教授(がん疫学)は「一般的に検診を肯定的に捉える風潮が強いが、検査を受けることで発生する不利益も考えてほしい」と話す。

 日本でも厚生労働省の研究班がまとめた指針によると、個人の判断で受診することは妨げないものの、市区町村が行うがん検診への導入は勧められないという。がん検診の最も重要な点は、検査によってそのがんによる死亡率を下げることだが、国立がん研究センター検診研究部の中山富雄部長は「PSA検査には『下げる』と『下げない』と両方のデータがあるため証拠が不十分で、現時点で結論が出せない」と指摘する。

 8割超の市区町村がPSA検査を導入している中で、熊本市や東京都八王子市のように厚労省研究班の指針を順守し、PSA検査を提供していない自治体もある。大阪府は府内の市町村に対し、指針に基づく検診だけを実施するよう通知することも検討している。

多い選択肢 十分理解を
 利益と不利益をきちんと理解してからPSA検査を受けるべきか判断すべきだが、検査して「異常」となった場合にはどんな精密検査や治療が必要になるのか。

 がんかどうか確定するには精密検査の針生検が必要だが、年齢や前立腺の大きさ、MRIの画像検査の結果次第で針生検を一度中止し、半年から1年後にPSA検査を再び行ってから決めることもできる。……。

 治療としては、がんの転移があれば、薬剤で男性ホルモンを下げてがん細胞の増殖を抑える。一方、がんが前立腺内にとどまっている場合は、▽手術▽放射線▽監視療法--の3種。ただ、手術でがんを取り除こうとすると、前立腺周辺の神経や括約筋にダメージが加わり、……。放射線治療でも、排尿困難や頻尿、血尿、便秘の症状が出る可能性もある。

 監視療法は、がんが前立腺内にとどまり、PSAの値も血中濃度が1ミリリットル当たり10ナノグラム未満といった低リスクの患者に対して行われ、3カ月ごとにPSA検査を、1年後に針生検を受け、がんの進行を見極めていく。しかし、針生検にも感染症や排尿障害が出る恐れがある。

 国立病院機構大阪医療センター泌尿器科の西村健作科長は「前立腺がんは治療の選択肢が多岐にわたるため、長所と短所を説明するのに十分な診療時間が必要だ。患者は3種の治療内容と有効性、合併症などを偏りなく理解したうえで、納得できる治療を選んでほしい」と話した。

| | コメント (0)

見えてきた排尿障害の仕組み

過去にたくさんの排尿障害の仕組みを考察してきました。
検査所見の存在に対して、疑問点が常にありました。排尿障害の患者さんには、男女問わず、膀胱出口が硬く盛り上がっていました。その理由については、排尿障害のために膀胱出口が排尿時に振動するので、次第に膀胱出口が盛り上がると考えていました。でも実際に、内視鏡手術の際に膀胱出口を切開・切除すると、そこは必ず平滑筋組織です。もしも振動エネルギーで盛り上がっているのであれば、線維組織のはずです。つまり、盛り上がった膀胱出口の組織は、膀胱括約筋の二次的な姿なのです。排尿障害の患者さんの膀胱括約筋は、必ずマッチョなのです。

マッチョになるためには、振動エネルギーではなく、筋トレによるものだと考えられます。筋トレ?……膀胱括約筋の筋トレ相手は、排尿時に収縮する膀胱出口周囲の縦走筋です。つまり何らかの理由で、排尿時に膀胱括約筋が柔らかく弛緩しないので、縦走筋に引っ張られる際に鍛えられたのでしょう。

そう考えると、α1-ブロッカーであるユリーフやハルナールなどの即効性の理由が理解できます。α1-ブロッカーは、前立腺や尿道の緊張を緩めるのではなく、膀胱括約筋=内尿道括約筋の緊張を緩めるので、膀胱出口が開きやすくなるのです。
Bladderanat
膀胱の構造は、大きく分けて膀胱体部、膀胱三角部、膀胱出口(膀胱頸部)に分けられます。筋肉の観点から見ると、膀胱体部は二層構造で、内側が輪状筋、外側が縦走筋です。輪状筋は、膀胱の横方向の直径を小さくするように収縮させます。縦走筋は膀胱の外側に存在し、膀胱の天辺の部分が膀胱出口に向かうように収縮させます。この2つの筋肉の働きで、膀胱は膨らんだり縮んだりするのです。膀胱出口は複雑で、膀胱出口ギリギリまで輪状筋と縦走筋が到達し、その内側に膀胱括約筋=内尿道括約筋が位置します。先ほど説明したように、排尿障害のある人は、膀胱出口周囲の膀胱括約筋が発達・肥厚しています。これは、縦走筋と膀胱括約筋の排尿時の動きがシンクロせずに、逆にバランスが悪く、縦走筋が収縮する時に膀胱括約筋が緩まないで対抗している証拠です。

Ae15abbea3234d9cba0c5249136dc06d
この画像は、3Dエコー検査で観察した膀胱出口の所見です。
見て分かるように、膀胱出口を中心とした同心円状ではありません。
これを分かりやすく説明したのが、次のイラストです。

Um3d
イラストで見えるように、輪状筋は、膀胱三角部を挟んでブーメランの様な形をしています。
何故この様な形状をしているかは、それなりの理由があります。
発生段階で、尿管の原基を囲むように輪状筋が発達したからです。そして、尿管の原基から膀胱三角部が形成したのです。

Um3
3Dエコー画像を元に、下部尿路の基本的構造を左のイラスト側面像で示しました。
膀胱出口周囲に存在する赤い部分が、どちらも膀胱括約筋です。膀胱内側の肌色の部分が輪状筋で、外側の空色の部分が縦走筋です。

Um4
健常であれば、右のイラストで示すように排尿時に、両方の膀胱括約筋が緩んで、縦方向に収縮した縦走筋の意のままに膀胱出口は開き、オシッコがスムーズに出るのです。

Um5
排尿障害の患者さんは、どう言う訳か膀胱三角部も含め、排尿時に弛緩しないでギューっと収縮します。縦走筋が収縮して膀胱出口を開こうとしても十分に開かないのです。
この経過が長期間に渡ると、膀胱括約筋が縦走筋と筋トレしていることになり、イラストのように次第にマッチョになります。排尿障害の患者さんをエコー検査で観察すると、膀胱出口前部の膀胱括約筋と膀胱三角部の膀胱括約筋が厚くなり、膀胱側に突出しています。

Um6
この膀胱括約筋の肥厚は、イラストで表現したように、まるで膀胱出口を鍵でロックした状態になるのです。
この状態が何十年も続けば、縦走筋や輪状筋は疲れ果てて、男女関係なく神経因性膀胱と診断されます。排尿時の圧力が前立腺を刺激して、前立腺肥大症になります。膀胱三角部が突出すると、中葉肥大型と判断される形状です。
排尿障害の患者さんの内視鏡手術の際には、この固くなった膀胱括約筋の切開・切除が重要になります。ところが、前立腺肥大症だと、「肥大症」とい言葉に翻弄されて前立腺しか手術しないので、手術後も排尿障害が続くのです。

以上のように排尿障害し続くと、何故に頻尿・残尿感・尿意切迫感などの症状が発現するのでしようか?実は、膀胱三角部の括約筋は、圧力センサーでもあるのです。通常は蓄尿で膀胱内圧が高まると、その圧力が膀胱三角部の圧力センサーを刺激して尿意を感じるのです。ところが、膀胱三角部が肥厚したために膀胱三角部の組織密度が高まり、膀胱内圧の反応閾値に関係なく、圧力センサーが過剰に反応してしまうのです。

治療としては、膀胱括約筋の緊張を緩めて上げれば良いのです。そのために、ユリーフ・ハルナール・フリバスなどのα1-ブロッカーの処方です。ご婦人の場合は、エブランチルしか処方できません。
次に膀胱三角部に特異的に作用するベタニスなどのβ3刺激剤が有効になります。
また、膀胱内圧を下げることで、膀胱三角部の圧力センサーを二次的に刺激しないように、輪状筋の過敏性収縮を抑えることです。そのために、ベシケア・ステーブラ・トビエースなどの抗コリン剤が必要になります。


| | コメント (3)

α1-ブロッカーの速効性の理由#2

M3umecha実は、尿道括約筋の他に、膀胱括約筋と言う排尿に深く関わる括約筋が存在します。さらに、尿管の延長線上にある膀胱三角部が尿道括約筋近くまで延びています。この2つの括約筋と膀胱三角部の協同作業が排尿メカニズムの本質なのです。
尿道括約筋は、人の意思で動く骨格筋=横紋筋です。膀胱括約筋は、人の意思とは無関係の自律神経支配の内臓筋=平滑筋です。人がオシッコをしようと力むと、
①尿道括約筋(赤い大勢のヒト型モデル)が収縮して引っ張りながら開きます。
②次に、自律神経を介して、オートマチックに膀胱括約筋(白い二人のヒト型モデル)が収縮して膀胱出口が開くのです。
③尿道括約筋に膀胱三角部が引っ張られます。
④そして、
(イ)腹筋
(ロ)内臓の重さ
(ハ)膀胱の収縮
(ニ)膀胱内のオシッコの重さ
で尿が流れ出るのです。
この3つの筋肉の動きと4つの圧力でオシッコが出るのです。膀胱の力がないから、オシッコが出ないという神経因性膀胱の単純な診断にとても疑問を感じますよね?

M3umecha2
筋力の強さは、尿道括約筋>>>膀胱括約筋です。何故ならば、尿道括約筋は骨格筋で、膀胱括約筋は内臓の筋肉だからです。横紋筋・骨格筋は「赤い筋肉」で、マグロと同じです。平滑筋・内臓筋は「白い筋肉」でタイやヒラメと同じです。マグロの方が長時間力強く動けますが、タイやヒラメは短時間の動きしかできません、この状態が長期間続くと、中年以降に内臓の筋肉である膀胱括約筋(青いヒト型モデル)は疲れ果てます。そのため、排尿の際に膀胱括約筋の収縮力が弱くなり、上記の排尿メカニズムがスムーズに作用しなくなります。その結果、膀胱出口が開かずに、膀胱三角部・尿道・前立腺が引っ張られて尿道側にペコッと凹むように狭くなります。それが、中年以降の排尿障害になります。
排尿障害と診断されると、
①前立腺が大きいと「前立腺肥大症」
②前立腺が小さいと「神経因性膀胱・慢性前立腺炎」
③ご婦人だと、やはり「神経因性膀胱」、不定愁訴が強い「過活動膀胱・間質性膀胱炎」
と誤診されるのです。膀胱出口が狭まるので、排尿障害の患者さんの膀胱出口から流出した尿はジェット流になるので、尿道口から出る尿は、分裂したり散ったりします。

M3umecha3
α1-ブロッカー(ハルナール・ユリーフ・フリバス)を服用すると、前立腺・尿道・膀胱三角部の平滑筋の緊張が緩むために硬さが取れ、膀胱出口にかかる尿道括約筋のけん引力が低下して、膀胱出口が凹んで狭くならなくなります。また、前立腺の硬い被膜が尿道括約筋によって引っ張られるので、膀胱出口が逆に開きやすくなります。その結果、膀胱出口が間接的にある程度開くので、排尿がスムーズに流れ出るのです。

しかし、前立腺肥大症で前立腺の組織密度がきわめて高いと、いくらα1-ブロッカーを使用しても、前立腺の硬さは取れません。そうなると、この排尿メカニズムだけでは、オシッコがスムーズに出ません。

オシッコという普通、ヒトが誰も意識もしない生理現象を当たり前だと思うので、いい加減な病態生理で病気を治療するのです。もっと、基本にかえって分析するべきです。そうすれば、誤診されて苦しむ患者さんが少なくなります。
人間の身体の基本構造(解剖学的・生理学的)を詳細に考慮することで、病気の本質が見えてきます。

| | コメント (0)

α1-ブロッカーの速効性の理由#1

M3bph
前立腺肥大症で、頻尿や排尿困難の患者さんに、α1-ブロッカーを服用すると、数日で効果が出てきます。かなりの速効性です。

前立腺肥大症が排尿障害になる理由は、次の通りです。
前立腺肥大症で組織密度が高くなり硬くなった前立腺が、尿道を圧迫して排尿障害になるからです。さらに、前立腺内の平滑筋のα受容体を介して、交感神経の指示通りに緊張するので、前立腺がますます硬くなります。

M3bph2
α1-ブロッカーを使って、α1受容体をブロックしますから、交感神経の指示が抑えられ平滑筋の緊張が軟らかくなります。そのため、尿道の圧迫が取れて尿が出やすくなるというものです。
しかし……です……前立腺が小さい患者さんで排尿障害の患者さんにも効果があります。さらに、ご婦人にα1-ブロッカーを服用していただくと、何と前立腺のないご婦人にも効果があるのです。

したがって、前立腺が軟らかくなったから、尿道が圧迫されないで、排尿がスムーズになると言うのは、ある意味で「いい加減」な理論です。目に見えない現象を発想の貧弱な専門家が、自分たちが想定した動物実験や臨床治験で得られた結果を公表して、自分たちの理論が、あたかも真実かのごとく思い込んでいるのでしよう。

M3p
では、既存の排尿のメカニズムを解説しましよう。
一般的に考えられている排尿のメカニズムは、イラストのように①尿道括約筋が開く②膀胱が収縮する③膀胱出口が二次的に開く④尿が流れ出る、とされています。尿道括約筋は、通常は尿が漏れないようにしまっていて、排尿時に開いて、膀胱の圧力で膀胱出口が開くいて排尿すると思われています。
この理論が、誰が見ても一見正しいと思われるのが、病気の本質が見えてこなくなる原因です。しかし、こんなにも単純なメカニズムでオシッコが本当に出るでしょうか?尿道括約筋が開くだけで、こんなにも簡単に前立腺と膀胱出口が開いてくれるでしょうか?
この理論が正しければ、
①前立腺が小さい患者さんで排尿障害で苦しんでいる患者さんは、膀胱の力が弱くなった神経因性膀胱と診断されます。
②ご婦人でも、排尿障害の患者さんは、やはり神経因性膀胱と診断されます。
でも、α1-ブロッカーを服用していただくと、膀胱の力が戻る訳でもないのに排尿障害は改善します。
また、前立腺肥大症がとても大きな患者さんでも、排尿障害のまったくない人もいます。この理論では、説明ができません。

続く……。

| | コメント (0)

PSA検査の大いなる誤解と弊害

間寛平さんの出演する前立腺癌早期発見キャンペーンをテレビ・コマーシャルでよく見ることがあります。
PSA検査で前立腺癌を早期発見しようというキャンペーンです。年間43000人が前立腺癌になるという恐ろしい内容です。
依然、このブログで、PSA検査を発見した研究者の最近の思いを掲載しました。(ニューヨーク・タイムズの記事)ここにその直訳を載せましょう。

Published: March 9, 2010
Tucson
発行日: 2010年3月9日ツーソン

EACH year some 30 million American men undergo testing for prostate-specific antigen, an enzyme made by the prostate. Approved by the Food and Drug Administration in 1994, the P.S.A. test is the most commonly used tool for detecting prostate cancer.
『毎年約3000万人のアメリカ人の男性が、前立腺特異抗原PSA(前立腺によって作られる酵素)の検査を受けています。1994年に食品医薬品局によって承認されたPSA検査は、前立腺癌検査の最も一般的に使用される検査法です。』

The test’s popularity has led to a hugely expensive public health disaster. It’s an issue I am painfully familiar with — I discovered P.S.A. in 1970. As Congress searches for ways to cut costs in our health care system, a significant savings could come from changing the way the antigen is used to screen for prostate cancer.
『このPSA検査の流行は、高額な経費かけた国民の健康被害に発展しました。 この問題は、私にとって切ないほど馴染みのある問題です。なぜなら、1970年に私がPSAを発見したからです。 議会が国民のヘルス・ケア・システムでコストを削減する手立てを模索している時に、抗原が前立腺癌のスクリーニング検査として使用される方法に変えることで、かなりの節約になりました。』

Americans spend an enormous amount testing for prostate cancer. The annual bill for P.S.A. screening is at least $3 billion, with much of it paid for by Medicare and the Veterans Administration.
『アメリカ人は前立腺癌の検査に巨額の費用を負担しています。 PSAスクリーニング検査のため、毎年の請求額は少なくとも30億ドル(2400億円)です。それらの多くが老人医療健康保険制度と復員軍人援護局によって支払われています。』

Prostate cancer may get a lot of press, but consider the numbers: American men have a 16 percent lifetime chance of receiving a diagnosis of prostate cancer, but only a 3 percent chance of dying from it. That’s because the majority of prostate cancers grow slowly. In other words, men lucky enough to reach old age are much more likely to die with prostate cancer than to die of it.
『前立腺癌と聞けば多くの重圧を感じるかもしれませんが(あるいは、前立腺癌と知れば多くの記事や評判になるかも知れませんが)、次の数字を考えてみてください。 アメリカ人の男性が、生涯に前立腺癌の診断を受ける可能性は16パーセントです、しかし、前立腺癌で死亡というのは、わずか3パーセントしかありません。 それは前立腺癌の大部分の成長が遅いからです。 言い換えれば、幸運にも高齢者になった男性は、前立腺癌が原因で亡くなるよりも、前立腺癌を持って亡くなる人の方がはるかに多いのです。』

Even then, the test is hardly more effective than a coin toss. As I’ve been trying to make clear for many years now, P.S.A. testing can’t detect prostate cancer and, more important, it can’t distinguish between the two types of prostate cancer — the one that will kill you and the one that won’t.
『その時でさえ、この検査はコイン占い(コイントス)より無意味です。 私が、今まで何年間も明らかにしようとして出来なかったことは、PSA検査で前立腺癌を検出できないこと、さらに重要なことは、それが2つのタイプ、つまり死亡原因になる癌か天寿を全うできる癌かを見分けることができないということでした。』

Instead, the test simply reveals how much of the prostate antigen a man has in his blood. Infections, over-the-counter drugs like ibuprofen, and benign swelling of the prostate can all elevate a man’s P.S.A. levels, but none of these factors signals cancer. Men with low readings might still harbor dangerous cancers, while those with high readings might be completely healthy.
『代わりに、この検査は、男性の血中前立腺抗原がどのくらい持っているかが単に分かるだけです。 感染症、イブプロフェンのような市販薬、および前立腺肥大症はすべて、男性PSAレベルを上げます。しかし、これらの要素のいずれも癌ではありません。 PSA値が低いと判定された場合でも、前立腺癌を完全否定することはできませんが、一方で、高いと判定された場合でも、健常者とされる場合もあります。』

In approving the procedure, the Food and Drug Administration relied heavily on a study that showed testing could detect 3.8 percent of prostate cancers, which was a better rate than the standard method, a digital rectal exam.
『承認手続きの際に、食品医薬品局は、一般的な検査法である直腸触診に比べ前立腺癌発見率が良いとして、3.8パーセントの前立腺癌を検出できたPSA検査研究を大いに根拠としました。』

Still, 3.8 percent is a small number. Nevertheless, especially in the early days of screening, men with a reading over four nanograms per milliliter were sent for painful prostate biopsies. If the biopsy showed any signs of cancer, the patient was almost always pushed into surgery, intensive radiation or other damaging treatments.
『それでも、3.8パーセントは少ない数です。 それにもかかわらず、特に初期のスクリーニングでは、PSA値4ナノグラム/mL以上の男性を苦痛な前立腺生検へとしました。 生検で何か癌の兆候を見つけたら、ほとんどいつも外科的治療や積極的な放射または他のダメージが大きい治療に患者さんは追い込まれました。』

The medical community is slowly turning against P.S.A. screening. Last year, The New England Journal of Medicine published results from the two largest studies of the screening procedure, one in Europe and one in the United States. The results from the American study show that over a period of 7 to 10 years, screening did not reduce the death rate in men 55 and over.
『医学界はPSAスクリーニングに対してゆっくりと方向転換しています。 昨年、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンは、スクリーニング方法について2つの大規模研究を報告しました。1つはヨーロッパ、もう1つは合衆国の研究です。 アメリカの研究結果からは、7年~10年の期間にわたっての研究で、PSAスクリーニング検査は55歳以上の男性の前立腺癌死亡率を低下させることはなかったという報告です。』

The European study showed a small decline in death rates, but also found that 48 men would need to be treated to save one life. That’s 47 men who, in all likelihood, can no longer function sexually or stay out of the bathroom for long.
『もう一つのヨーロッパの研究では、死亡率のわずかな減少を示しましたが、48人もの男性のスクリーニング検査で、治療が必要な人をたった1人しか見つけるにすぎませんでした。 残りの47人の男性は、ほとんど性的機能が廃絶しているか、入浴できないような人たちでした。』

Numerous early screening proponents, including Thomas Stamey, a well-known Stanford University urologist, have come out against routine testing; last month, the American Cancer Society urged more caution in using the test. The American College of Preventive Medicine also concluded that there was insufficient evidence to recommend routine screening.
Thomas Stamey、『ご存知スタンフォード大学泌尿器科医、を含む多数の早期スクリーニング提案者たちは、定期PSA検査に反対しました。 先月、アメリカ癌協会はPSA検査を行う際に、さらに多くの注意を喚起しました。 また、American College of Preventive Medicine は、定期検査を推薦するには根拠が不十分であったと結論を下しました。』

So why is it still used? Because drug companies continue peddling the tests and advocacy groups push “prostate cancer awareness” by encouraging men to get screened. Shamefully, the American Urological Association still recommends screening, while the National Cancer Institute is vague on the issue, stating that the evidence is unclear.
『さて、PSA検査はなぜまだ続けられているのでしょうか? 製薬会社が、PSA検査を売り続けていることと、圧力団体が、男性はスクリーニング検査を受けるように「前立腺癌の啓蒙」を押しているからです。 恥ずかしくも、アメリカ泌尿器科学会は、スクリーニング検査をまだ勧めています。一方、国立ガン研究所はこの問題に関してあいまいな立場ですが、証拠が不明瞭と述べています。』

The federal panel empowered to evaluate cancer screening tests, the Preventive Services Task Force, recently recommended against P.S.A. screening for men aged 75 or older. But the group has still not made a recommendation either way for younger men.
『癌検診を評価するのに権限を与えられた連邦委員会(Preventive Services Task Force)は、最近、75歳以上の男性に対してPSAスクーリング検査を推薦しました。 しかし、委員会は、75歳未満の男性に対していずれにせよ勧告はしませんでした。』

Prostate-specific antigen testing does have a place. After treatment for prostate cancer, for instance, a rapidly rising score indicates a return of the disease. And men with a family history of prostate cancer should probably get tested regularly. If their score starts skyrocketing, it could mean cancer.
『前立腺特異抗原テスト(PSA)は今でも一定のポジジョンを占めているのも事実です。 例えば、前立腺癌治療後に、急速に上昇するPSA値は、病気の再燃を示します。また、前立腺癌の家系がある男性は定期的にPSA検査されるでしょう。 PSA値が急峻に上昇し始めるなら、それは癌を意味します。』

But these uses are limited. Testing should absolutely not be deployed to screen the entire population of men over the age of 50, the outcome pushed by those who stand to profit.
『しかし、これらの用途は限定的です。 50歳以上のすべての男性をスクリーニングするためにPSA検査を絶対に実施すべきではありません。PSA検査は利益追求側に立った人々によってごり押しされた代物です。』

I never dreamed that my discovery four decades ago would lead to such a profit-driven public health disaster. The medical community must confront reality and stop the inappropriate use of P.S.A. screening. Doing so would save billions of dollars and rescue millions of men from unnecessary, debilitating treatments.
『40年前の私の発見が、このような利益主導の国民健康災害につながるとは夢にも思いませんでした。 医学界は、現実に立ち向かって、PSAスクリーニングという誤りを止めなければなりません。 そうすることで、何十億ドルの節約と数百万の男性を不要で有害な治療から救出することがきっと出来るでしょう。』

【原文】

» 続きを読む

| | コメント (5)

グリソンスコア5+5=10のラテント癌

今回、ご紹介するのは、PSA値が高く心配になり、平成29年6月に来院した72歳の男性患者さんです。
平成28年にPSA値が5以上になり、診療所や大学病院で前立腺針生検をすすめられました。当院初診時には、超音波エコー検査でも触診でも、前立腺癌の所見は認められませんでした。

夜間頻尿(2回~6回)があり、超音波エコー検査で前立腺結石と膀胱三角部の肥厚を認めたので、排尿障害によるPSA値上昇と判断したのでした。
Img_1203
その後も超音波エコー検査と触診を2回実施しましたが、前立腺癌の所見は得られませんでした。
その間、PSA検査を受け、その値が11を超えることもあり、患者さんは悩みました。また、周囲の友人のアドバイスも受け、私に内緒で、某がんセンターで前立腺針生検を受けてしまったのです。その結果、12本中2本に前立腺癌が発見されてしまいました。それもグリソンスコア5+5=10の悪性度の一番高い前立腺癌でした。
エコー検査や触診で確認できなくて、針生検で12本中2本ですから、ステージⅠのラテント癌ということです。問題なのは、悪性度の高いグリソンスコア10の前立腺癌を針生検で刺激してしまったことにあります。患者さんは、急いで当院を受診して今後の方針を相談に来られました。半ば後悔をしているようです。
Img_1201_2
先ず、針生検した病院での治療方針が決まるまで、骨シンチ、MRI検査の結果待ちで3週間ほどありました。主治医は何も考えずに、計画を立てて待っています。
その間に針生検による傷害を治すために、体内の免疫・炎症システムが活発になります。結果、免疫細胞に傷付いた癌細胞は、マクロファージに貪食されるか、別の場所に運ばれてしまいます。

Ilastakuninpp
能力の高い前立腺癌細胞が、自分たちの受けている状況を何もせずに傍観している訳がありません。癌細胞にとって、出来ることは、細胞分裂しかありません。癌細胞が細胞分裂をすればするほど悪性度が増すのです。癌細胞は通常3〜6週間に1回バラバラに分裂しますから、放置できません。
治療方針が決まるまで、エストラサイトを週1回1カプセルの低容量を服用してもらいました。その後、重粒子線治療を決めたのですが、人気で混んでいるため9月に開始することになりました。それまで、エストラサイトを続けて服用していただきました。

今回の記事は、この患者さんからのご希望で掲載しました。いろいろな体験をされる患者さんがおられます。記事を参考にベストの選択をされてください。


| | コメント (13)

泌尿器科の医師は、排尿障害と言う基本概念に戻れ!

Ilastnb4
①前立腺ガンの腫瘍マーカーであるPSAが高くなる原因のほとんどが、前立腺肥大症や膀胱頚部硬化症による排尿障害が原因です。500人中の88%、440人が排尿障害でPSAが高い患者さんでした。

②慢性前立腺炎の患者さんも調べると、前立腺肥大症や膀胱頚部硬化症などの患者さんが自覚しない「隠れ排尿障害」が認められ、排尿障害の治療を行うと症状は軽快します。

③間質性膀胱炎や過活動膀胱の女性患者さんにも、「隠れ排尿障害」が潜んでいて、排尿障害を治療すると、症状は軽快します。

④陰部がかゆくなる陰嚢掻痒症・陰部掻痒症・陰門掻痒症(肛門のかゆみ)などの患者さんにも、「隠れ排尿障害」が潜んでいて、排尿障害を治療すると、かゆみは軽快します。

⑤原因不明の坐骨神経痛の患者さんの中にも、一定の割合で、「隠れ排尿障害」が潜んでいて、排尿障害を治療すると、痛みが軽快します。

⑥神経因性膀胱は、膀胱に力が無くなったから排尿できないと、一般的に考えられます。しかし、なぜ突然に神経因性膀胱になるのかという議論はなされません。長年かけて膀胱出口が十分に開放されないために、疲労・疲弊してしまった膀胱を「神経因性膀胱」と診断しているだけです。ダメになった膀胱を検査結果で、幾つにも分類しても、患者さんを治すことができませんから、全く意味がありません。隠れ排尿障害であったために、患者さんは排尿障害を自覚していません。しかし、膀胱は次第に疲れて、ある日突然に排尿障害を自覚して、それが神経因性膀胱と診断されるのです。

病気の原因をおろそかにして、目に見える症状だけに振り回されている医師は、素人同然です。長い年月をかけて得た知識と経験を利用して、患者さんの病気し本質を見つけようではありませんか!


| | コメント (0)

膀胱出口閉塞症・症候群と言う考え方

アメリカには膀胱出口閉塞症と言う考え方がありますが、具体的に明確な定義がありません。日本では、膀胱に関する病気がたくさんあります。膀胱の病気には、アレルギー性膀胱炎・細菌性急性膀胱炎・慢性膀胱炎・心因性頻尿・過活動膀胱・膀胱疼痛症・間質性膀胱炎・うっ血性骨盤疼痛症候群・慢性骨盤内疼痛症候群・神経因性膀胱などです。ところが、すべての病気が原因不明です。
この中で、ハッキリした原因があるのはアレルギー性膀胱炎と細菌性急性膀胱炎の2つだけです。この2つ以外の病気の原因は、とてもいい加減です。

①慢性膀胱炎:
陰部を不潔にしている、お尻を拭く時に後ろから前に拭くので不潔になる、などの理由で膀胱炎になるとされる。患者さんが一生懸命に陰部を清潔にしても治らない。
②心因性頻尿:
ストレスなどで神経が過敏なった結果、頻尿になる。
③過活動膀胱:
原因不明で頻尿・尿意切迫感・切迫性尿失禁の総合的病名。
④膀胱疼痛症:
原因不明の膀胱を中心とする痛みの病気。他の膀胱の病気に併発することがある。
⑤間質性膀胱炎:
極端な頻尿と痛みを伴う病気である。アレルギーと思われている。膀胱粘膜の所見で確定診断をする。
⑥うっ血性骨盤疼痛症候群:
ご婦人の原因不明の下半身疼痛を示す病名。うっ血所見(静脈血の低下・静脈瘤)があります。
⑦慢性骨盤内疼痛症候群:
慢性前立腺炎の別名。
⑧神経因性膀胱:
膀胱に力がなくなったからオシッコが出ない・・・その理由は不明。

Urinmecha
これらの患者さんを調べると、多かれ少なかれ、排尿障害が隠れています。ところが、極端な排尿障害ではないので、診察している医師が重要視せずに無視するので、結果、原因不明になるのです。その根源は、排尿の仕組みを正確に理解していないからです。尿道括約筋が開くから、連動して(白い破線矢印⇕)膀胱出口が自動的に開いて排尿すると思っているのです。生身の生体の扉が、そんな単純な仕組みで出来ていると思う方がおかしいでしょう。

Urinmecha2
尿道括約筋は開くのではなく、引っ張っている(けん引)のです。特に膀胱三角部が尿道括約筋のギリギリ手前まで伸びていますから、前後方向に開きます。同時、に膀胱括約筋が収縮することで、膀胱出口がロート状に開くので尿がスムーズに出るのです。

Urinmecha3
膀胱括約筋は内臓の筋肉=平滑筋です。尿道括約筋は体を動かすための骨格筋=横紋筋です。
力強さは、横紋筋>>>平滑筋ですから、年齢を重ねる毎に平滑筋=膀胱括約筋は疲労困憊して十分に収縮できなくなります。すると、力強い横紋筋=尿道括約筋だけが頑張るので、イラストの如く、膀胱出口が逆に狭くなり(ガチン)、オシッコが出にくくなるのです。

その状態が、繰り返し繰返し、長期間に渡って繰り返されると、膀胱出口は硬くなります。また、膀胱三角部もその振動で硬くなります。組織が硬くなると言う事は異常現象ですから、情報収集のためにセンサーが生まれ、脊髄神経回路と密接の繋がります。これがすべての病気の症状出現と結びつくのです。
膀胱三角部が過敏になれば、頻尿・残尿感・尿意切迫感・尿失禁になります。それぞれの症状の程度と組合せにより、慢性膀胱炎・過活動膀胱・間質性膀胱炎と診断されるのです。
膀胱三角部と連結している脊髄神経回路がバージョン・アップすると痛み症状が強くなり、膀胱疼痛症・間質性膀胱炎・慢性前立腺炎,慢性骨盤疼痛症候群と診断されるのです。
膀胱出口の硬さが増して、膀胱全体が疲弊すると、神経因性膀胱と診断されるのです。神経因性膀胱の専門医は、ダメになった膀胱をいろいろな検査で分類分けするのです。ダメになった理由を追求しないで、……「神経がダメになったのだから、治せませんね。」と、安易な診断をするのです。本当に無能です。
このように考えれば、極端なオシッコの出の悪さを自覚しなくても、病気が作られるのは理解できるでしよう。


| | コメント (0)

イギリスから訪れたご夫婦

イギリスの健康診断でPSA値が高く、主治医から針生検を強いられて悩むご主人を見て、奥さまがインターネット検索で、私の書いているブログをお読みになりました。私の意見に共感し、日本に来る予定があったので、ご夫婦で高橋クリニックにお越しになりました。奥さまは、私のブログをお読みになっているので、積極的ですが、ご主人は連れて来られたという印象で、落ちつかない様子です。

Psa36492england2
前立腺の大きさは32cc(正常20cc)で少し大きめです。また、膀胱出口が膀胱側に突き出ています(白い矢印↖️)。本来の前立腺と膀胱の境界線は点線のラインです。この形態から、排尿障害が強いと考えられます。
触診では、典型的な前立腺肥大症の硬さで、左右差がありません。前立腺ガンの固い硬結も触れませんから、前立腺ガンの心配はありません。

Psa36492england3
結局、排尿障害が強く、さらに前立腺肥大症もあるために、排尿時の強い圧力(青い矢印⬇︎)がスムーズに尿道を通過しません。そのため、圧力⬇︎はすべて前立腺にかかります。前立腺は【PSA】というタンパク分解酵素を貯蔵している臓器でもありますから、その圧迫でイラストの如くPSAが漏出して、血液検査でPSA値が高いと判断されるのです。

触診と超音波エコー検査で前立腺ガンが確認できなければ、前立腺ガンが存在しないか、あるいは最悪ステージⅠと判断できます。もしも、ステージⅠだとしても、5年生存率は癌でない人と比べても同じなのです。また、ステージⅠ・Ⅱ・Ⅲの5年生存率も同じですから、触診とエコー検査で確認できてから治療しても遅くはありません。様子をみることにしました。
1年後に再検査することにしました。奥さま!ご理解いただけましたか?

| | コメント (1)

PSA値141で悩む患者さん

Pca36484m60psa141ps
健診の血液検査で、PSA値が何と141も高かかったので、医療関係者の娘さんとご一緒に60歳代の患者さんが心配そうな面持ちで来院されました。
エコー検査の所見は、写真で示すように、前立腺の外腺に相当な体積(3.44㏄)で前立腺ガンを確認できます。赤い矢印➡が前立腺ガンで青い矢印➡が精嚢腺です。
触診でも右葉〜中央にかけて硬結が触れます。間違いなく前立腺ガンです。触診の硬さからすると、グリソンスコア7〜8でしよう。

Grade3type2
患者さんは、針生検は受けたくないが、手術か放射線治療を選択したいという雰囲気です。しかし、針生検を受けないと、希望する治療法は選べません。私が唱える、「針生検が逆に前立腺ガンに火をつけて、悪性度が増すかもしれない」という理論にも納得しているので、決断がつかないのです。
グラフで示すように、前立腺針生検直後から悪性度の高い前立腺ガンの患者さんの生存率は極端に低下します。前立腺針生検するまでに、隠れていた悪性度の高い患者さんがすでに多く亡くなっていあたというデータはありません。どう考えても前立腺針生検が引き金になっていたのでしょう。

そこで、患者さんに提案をしました。針生検の2日前と前日の2日間だけエストラサイト(女性ホルモン+抗ガン剤)を1カプセル服用して、針生検によるガンの興奮を一時的に抑えること。術後、毎週1回1カプセル服用して、その後のガンの興奮を抑え込もうというものです。患者さんは、私の提案を承諾して頂けました。


| | コメント (4)

陰部の痛みを「歳のせい・気のせい」と言われ高齢者

Cp36485m722
以前からオシッコが近い70歳過ぎのご高齢の患者さんです。ご家族3人でお越しになりました。
昨年の夏頃から陰部がピリピリ痛くて仕方がありません。そこで、診療所や病院を3軒受診しましたが、前立腺肥大症の診断で、ハルナールとセルニルトンを処方されましたが、症状は改善しません。
最近では、肛門まで痛くなり、肛門科を受診しましたが、いぼ痔があるだけで、特に問題なしと診断されたのです。
泌尿器科の医師は、「歳のせい・気のせい」とまで言われてしまいました。
早速、超音波エコー検査を行いました。この写真だけでは分かりにくいので、下にコメントを記しました。

Cp36485m723
すぐに分かることは、膀胱括約筋ふが四方に分裂していることです。これは、排尿障害によって、膀胱括約筋に物理的負荷がかかった結果です。そのため、膀胱三角部が厚くなり、膀胱刺激症状がいくつも作られても不思議ではありません。陰部のピリピリ感も肛門の痛みも膀胱刺激症状の一つと考えられます。
前立腺も大きさは31㏄と若干大きいだけです。治療薬としては、
①ユリーフ
排尿障害を改善させるため
②アボルブ
前立腺を柔らかくすることで、前立腺から膀胱三角部への緊張がゆるませるため
③ベタニス
膀胱三角部の緊張をゆるませるため

| | コメント (0)

膀胱括約筋の変形

排尿時に、尿道括約筋が尿道側にけん引されます。その際に膀胱括約筋が収縮することによって、膀胱出口がロート状に開くことで、排尿します。
Ilastumecha2
この膀胱括約筋と尿道括約筋の連携が円滑にできないと、排尿障害になります。尿道括約筋は、ヒトの意志で収縮しますが、膀胱括約筋は自律神経の働きで、ヒトの意志ではコントロールできません。排尿障害の患者さんは、長年に渡って、膀胱括約筋の断端が、尿道括約筋によってけん引され続けるので、断端が変形します。今回、その変形した症例をいくつかご紹介しましょう。

Sphincterps
まずは、ほぼ正常な膀胱括約筋の姿です。正常であれば、膀胱括約筋の方向は一方向に向かっています。その方向は、膀胱出口です。膀胱括約筋によって膀胱出口が開けば、尿道括約筋のけん引力は、膀胱出口だけにかかるので、膀胱括約筋には影響は及びません。実は、50歳代の頃の私の膀胱括約筋の姿です。

Sphincter15922m64ps
60歳代患者さんの膀胱括約筋の拡大写真です。
膀胱括約筋の末端の方向が2つに分かれています。
下の方向に分かれている部分は、尿道括約筋によって力強くけん引された結果です。

Sphincter16888m37ps
30歳代患者さんのエコー検査所見です。
排尿障害が原因の慢性前立腺炎症状で苦しまれています。
やはり、膀胱括約筋が2方向に分かれています。

Sphincter36433m70turps
70歳代患者さんです。
過去に前立腺肥大症の内視鏡手術を受けています。ところが、手術の後も、頻尿や痛みが治りません。
エコー検査の所見では、前立腺は削り取られていますが、膀胱三角部が手つかずで残っているので、症状がなくならないのです。
膀胱括約筋も2方向に分裂しています。

Sphincter20180526ps
この患者さんの膀胱括約筋は、実に大きく分裂しています。
長年かかって、繰り返し膀胱括約筋に物理的負担がかかると、こんなにも大きく開いてしまうのです。

排尿障害の患者さんが、皆んながみんな膀胱括約筋が変形している訳ではありません。多くの患者さんに認められます。2方向性の分裂所見のない患者さんの場合は、膀胱括約筋の方向が膀胱出口に向かずに、尿道括約筋の方向に向くことになります。いわゆる偏向型です。ご婦人の排尿障害の患者さんの場合は、ほとんどが分裂型ではなく、この偏向型が多いのです。

| | コメント (0)

平滑筋のスイッチ

前立腺肥大症・慢性前立腺炎・過活動膀胱・間質性膀胱炎などの治療に使用される薬剤のほとんどが、平滑筋に影響する薬理作用を持っています。
Smrecep_2
平滑筋は、すべての内臓を構成する筋肉です。体を動かす時に使う筋肉は骨格筋(横紋筋)です。内臓の筋肉とはいえ、筋肉ですから、収縮と弛緩を繰り返します。収縮=緊張、弛緩=リラックスの状態です。その動きの典型的なものが胃や大腸の蠕動運動です。これらの動きは、骨格筋に比べてとても複雑です。その理由は、たくさんの平滑筋細胞がお互い密接に連絡しあって情報交換をしているからです。一部の平滑筋は自律神経(交感神経・副交感神経)と連絡しており、そこから得た情報を隣接する平滑筋に次々と伝達するのです。まるで、伝言ゲームのようです。

自律神経に関わらないのが、一酸化窒素NOです。一酸化窒素が平滑筋にそばに存在すると、受容体を介さないで無条件で平滑筋内に侵入します。一酸化窒素は、平滑筋をリラックスさせる作用があるのですが、平滑筋の中で、直ぐに消滅してしまいます。
何の受容体かは不明ですが、大豆イソフラボンの受容体、正露丸の受容体、タガメットがブロックする受容体(H2レセプター)なども、長年の臨床経験上ある筈です。

Smrecep2_2
交感神経に反応するのが、膀胱・前立腺の平滑筋のα₁−受容体、β₃−受容体です。
副交感神経に反応するのが、平滑筋のM−受容体です。
交感神経が興奮すると、膀胱出口・前立腺にあるα₁−受容体を刺激し、オシッコを出にくくします。さらに、膀胱三角部にあるβ₃−受容体を刺激し、尿を我慢させます。受容体は平滑筋に変化を促す【スイッチ=受容体】です。逆に副交感神経が興奮すると、膀胱体部の平滑筋にあるM−受容体を刺激して膀胱を収縮させます。

この仕組みを考慮して病気の治療を考えると、次のようです。
排尿障害が病気の原因ですから、膀胱出口・前立腺をリラックスさせるために、α₁−受容体をブロックするクスリとして、ユリーフ・ハルナール・フリバスを使用するのです。
また、膀胱三角部をリラックスさせるために、β₃−受容体刺激剤のベタニスを使用するのです。
さらに、膀胱体部をリラックスさせるために、M−受容体をブロックするクスリとして、ベシケア・ステーブラ・ウリトス・トビエースを使用します。
ただし、平滑筋の数々の受容体の分布は、患者さんの膀胱や前立腺の位置によって異なるので、その組合せの影響で、とても効くヒトもいれば、まったく効かないヒトもいます。

平滑筋の緊張をリラックスさせることで、膀胱や前立腺の過敏な症状が軽減できるのかと言えば、平滑筋は筋肉としての動力装置でもありますが、実はセンサー・感覚器でもあるのです。

| | コメント (0)

レーザー光線手術をしたのに、頻尿・傷みが治らない患者さん

70歳代の男性患者さんがご夫婦で来院されました。
2年前から恥骨部分が痛くて仕方がないそうです。5年前に尿閉を繰り返したので、レーザーを使った前立腺肥大症の手術を行いました。
しかし、手術後も頻尿は改善せずに、毎日15回の頻尿と、夜間2回の頻尿です。さらに、恥骨の痛みが加わり、患者さんは苦しみ悩んでいるのです。
複数の病院を受診して、CT検査などの精密検査をしたにもかかわらず治らないので、精神科にも受診させられました。
娘さんが、インターネットで高橋クリニックを見つけて来院しました。
Turp36433m702
早速、超音波エコー検査をおこなうと、写真のような所見です。
これをご覧になっただけでは、ハッキリ分からないでしょう。
そこで、説明を加えたのが、次の写真です。

Turp36433m705
黒く見える大部分が尿の見えるところです。
レーザー光線で手術を行い、切除された部分が三角形線で示す部分です。
口を開けたヘビのように見える膀胱括約筋の上に、膀胱三角部(赤い→)がハッキリ確認できます。
これで、患者さんの痛み症状と頻尿症状が、前立腺肥大症の手術を行ったにもかかわらず治らなかった理由です。

Turp1
排尿障害→前立腺肥大症→頻尿になる理由を解説しましょう。
排尿障害によって、排尿中に膀胱出口は十分に開きませんから、膀胱出口が振動します。
その振動により、膀胱三角部が過敏になり肥厚します。
膀胱三角部は、尿意のセンサーですから、ここが過敏になると、頻尿や痛みが作られます。

Turp2
最先端のレーザー光線手術で、前立腺肥大症の主な部分(腺腫)を摘出して、それを細かくスライスして膀胱から除去します。
前立腺肥大症の手術だから、前立腺さえ除去すれば良いと、未熟な医師が考えるのです。

Turp3
ところが、前立腺は小さくなって、オシッコの出は良くなりましたが、過敏になった膀胱三角部が手付かずです。結局、過敏になったセンサーはそのままですから、症状が治る訳がありません。
ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー
【前立腺肥大症=排尿障害→頻尿+痛み】
と考えて、短絡的に前立腺肥大症を手術さえすれば、症状がなくなる!と思い込んでいるのです。病気は、そんなに単純ではありません。
本当は、
【排尿障害→前立腺肥大症+膀胱三角部の過敏→排尿障害の悪化+頻尿+痛み】
というのが、この病気の仕組みなのです。
治療は、前立腺肥大症と膀胱三角部の処置が必要になります。
ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー
この状態を解決するためには、膀胱三角部を落ち着かせることを目標とします。
①膀胱出口の緊張を緩めるために、ユリーフ
②膀胱三角部を直接に緩めるために、ベタニス
③残っている前立腺の硬さを柔らかくするために、アボルブ
④痛みは脊髄中枢で合成された痛みなので、脊髄中枢の興奮を抑える、トラムセット

以上の治療で改善が得られなければ、内視鏡手術で膀胱三角部を処置すればよいのです。


| | コメント (0)

去勢抵抗性前立腺ガンCRPCの発現率

Crpcbonemeta
前立腺ガンを標準治療でテストステロン(男性ホルモン)を抑制するホルモン治療を行うと、4年~5年で効かなくなります。この状態の前立腺ガンを去勢抵抗性前立腺ガンCRPCと呼びます。

どの程度の頻度で、この状態になるのか明確に記された文献がないので、いろいろ調べてみました。すると、こんな表を見つけました。癌が骨転移する確率と、その予後(生存期間)です。
前立腺ガンの場合、骨転移が発現する確率が、【65%~75%】とかなりの高さです。2人に1人以上の危険率で骨に転移したということになります。ただし、初めから骨に転移した人は別です。ホルモン治療しているにもかかわらず、骨にガン細胞が転移すると言う事は、すなわち、ホルモン治療では抑えることが出来なくなった前立腺ガンと言うことになります。つまり、【骨転移≒去勢抵抗性前立腺ガン】ということです。

Crpctherapy
先の表と同じサイトには、前立腺ガンの治療経過を示すイラストが併記されています。
このように、治療法・治療経過がイラストで表示できるほど、決まりきった前立腺ガンの個性なのです。では、どうして前立腺ガンは、このような性格が出てくるのでしようか?

前立腺ガンに、この特有な個性を促した要素かあるかもしれません。治療する前と後では、何が違うかと言うと、毎日のホルモン治療がキッカケです。ホルモン治療は、前立腺ガンを相当抑えることは出来ますが、完璧ではありません。そのために、ガン細胞がバージョンアップして、去勢抵抗性前立腺ガンが生まれるのです。「毎日」の治療がいけないのです。ガン細胞に治療を気付かせるのが去勢抵抗性前立腺ガンが生まれる原因だと私は考えています。

もしそうだとしたら、毎日ではなく、ガン細胞が気付かせない治療法を選択すれば良いと思います。つまり、密かに計画的に気付かないようにガン細胞の食事に毒を盛るような暗殺をするのです。
もう1つの考え方として、毎日大量の薬を間断なく連続して治療を続けると、ガン細胞の変身のストッパーを毎日1個ずつ外してしまうのではないでしょうか?そのため、治療を少量で1週間に1錠、2週間に1錠であれば、ガン細胞の変身ストッパーを外す時間がかかって、7年〜14年以上延ばすことが出来るかもしれません。
教科書的の知識だけが、常に正しいとは限りません。教科書的な知識の境界線を超えるような柔軟な発想で、目の前の事実の本質を見極めるべきです。

| | コメント (0)

予想以上に早く確認された前立腺ガン

Pca35613m72ps
72歳の男性患者さんです。
去年の8月にPSA値が5.61と高く心配になり、関西からお越しになりました。
超音波エコー検査や触診で、前立腺ガンは確認できませんでしたから、経過観察にしました。

ところが9カ月後の5月に、PSA値が8.658と若干高くなったので、心配になり再度患者さんがお越しになりました。超音波エコー検査では、以前確認できなかった陰影が前立腺の左に(赤い矢印)確認されました。陰影の大きさは0.89ccの体積です。触診でも、前立腺の左に硬結が触れました。明らかに前立腺ガンです。

前立腺ガンは、倍加速度が速いもので2年と言われていましたが、例外もあると認識さました。前回、エコー検査でも触診でも認識できなかった前立腺ガンが、たった9カ月で確認できるまでになった訳ですから、倍加速度2年というのは正直安心できません。注意深く観察するためには、出来れば半年に一度のペースが良いのでしょう。

遠方から飛行機に乗って、3か月に一度来院される患者さんもおられますが、さすがに半年に一度で十分でしょう。交通費が勿体ないと思います。

| | コメント (0)

前立腺ガンとフリバス

Furivas

今回の泌尿器科学会で興味を引いたのが、東京大学の先生が発表した下記のPDFファイルの報告です。
「jua2018_1297_unit_prog_ext_ja.pdf」をダウンロード


―★―★―★―★―★―★―★―★―★―
【背景】
我々は前回の研究で、ナフトピジルががん細胞にアポトー シスを誘導し増殖を抑制させること、後ろ向きではあるがタムス ロシン内服群(3.1%)に比べてナフトピジル内服群(1.8%)で 前立腺がんの発生率が有意に低いことを見出した。そこで今回、 前向きの無作為化比較研究でナフトピジルの前立腺がん発生予 防効果について検証研究を計画した。
【方法】
本研究は多施設共同非盲検無作為化比較試験である。初 回前立腺針生検で陰性だった前立腺肥大症症例のうち、すべての 選択基準を満足し、除外基準に抵触しない症例を対象に、ナフト ピジル投与群、非投与群に無作為に割付後、1 年毎に血清 PSA 値を測定する。血清PSA値が前回生検前直近値より上昇した場 合には前立腺針生検を行い前立腺がんの有無を確かめる。登録 割付日から前立腺がんの判定日までの期間を主要評価項目とし Kaplan-Meier法を用いて各群の前立腺がんイベント発症確率を 求め、log-rank検定により群間比較を行う。
【考察】
ドキサゾシンやテラゾシンなどのα1アドレナリン受容 体遮断薬がアポトーシスを起こしてがん細胞の増殖を抑制する ことは1994年から報告されている。その後、アポトーシスを誘 導する経路はα1アドレナリン受容体を介さない事、タムスロシ ンなど一部のα1アドレナリン受容体遮断薬ではアポトーシス を誘導する効果がないことなどが報告され、2007 年には後ろ向 きの研究であるがドキサゾシン、テラゾシンの内服者は非内服 者に比べ前立腺がんの発生率が低かった(1.65% vs 2.41%)と Harris らが報告した。ナフトピジルはα1アドレナリン受容体 サブタイプBへの親和性が低く血圧低下の作用が少ない薬剤で、 日本では前立腺肥大症の治療に使用されており、2008 年に神田 らから前立腺がん細胞株の増殖を抑制すると報告された。 本研 究はα1アドレナリン受容体遮断薬が前立腺がんの発生率に影 響するか検証する初めての前向き臨床研究である。  
―★―★―★―★―★―★―★―★―★―

ナフトビジル(商品名:フリバス)が前立腺ガンを自滅(アポトーシスapoptosis)させる作用があることが分かりました。アルファ・ブロッカーであるフリバスにこのような作用があるとは‼️ビックリです。排尿障害の治療薬としては、ユリーフ>>ハルナール>>フリバスのイメージでした。
それが事実であるのならば、前立腺肥大症などの排尿障害の症状がなくても、フリバスを前立腺ガンの治療薬として併用した方が良いことが理解できます。今後はフリバスの出番が多くなるでしょう。
フリバスは平滑筋に影響するクスリです。それからすると、平滑筋に効果のあるイソフラボンや正露丸も効果があるかもしれません。

| | コメント (1)

前立腺ガンの居場所

触診とエコー検査で確認できた前立腺ガンは、この6年間で100人以上もいました。その中で、前立腺外腺の他にガン陰影を発見したのは1例だけです。99%が外腺に認めました。
その他に前立腺全体を悪性度の高い癌が拡がっていた患者さんが1人いまいたが、この患者さんは、エコー検査では、前立腺全体に拡散したために確認はできませんでした。この様な患者さんは、本当に稀です。

しかるに、今の泌尿器科医師は、前立腺の深部中央の前立腺組織採取を懸命に行っているように思えます。
Pca36269m62psa657ps
例えば、この写真の患者さんは、前立腺尖部の左に厚さ2ミリ程度のガン組織の塊りを確認できます。
前立腺の境界線ギリギリに接した外腺に認めます。

Pca36270m56psa119ps
この写真の患者さんは、前立腺の右側に厚さ4ミリ程度のガン組織の陰影を確認できます。
やはり、前立腺の境界線ギリギリに接した外腺に認めます。

Img_1009
この写真の患者さんは、前立腺の右側奥の膀胱の裏側に厚さ4ミリ程度のガン組織の陰影を確認できます。
やはり、前立腺の境界線ギリギリに接した外腺に認めます。

これらの写真をご覧になって分かるように、前立腺ガンのほとんどが、前立腺の外腺に発生します。それにも、かかわらず触診もしないで、前立腺の内腺に向かって針を何本も刺すのです。前立腺ガンが見つからないばかりでなく、下手すると前立腺ガンを傷つけいためるだけです。そのせいで前立腺ガンは発見できませんでしたが、針生検が残った前立腺ガンを刺激して悪性度を増すのかもしれません。

| | コメント (0)

病気と症状と治療のタイミング

慢性前立腺炎、慢性膀胱炎、間質性膀胱炎、過活動膀胱、前立腺肥大症、神経因性膀胱、PSA高値などの患者さんが全国からお越しになります。
その理由は、地元の病院やクリニックでは治らないからです。
治らない原因の第一は、まずは病気の本質を治療しないからです。例えば、慢性前立腺炎や慢性膀胱炎は、「炎」という取りあえずの病名に合わせた治療しかしないからです。また、間質性膀胱炎や過活動膀胱は原因不明の病気ですから、頻尿や痛みに対する治療しかしないからです。更に、前立腺肥大症は、頻尿の出現理由を考えないで治療するからです。
Dyausynp2
病気の本質は、「排尿障害」です。
排尿障害→膀胱三角部の過敏→脊髄神経回路の構築→症状(頻尿・尿意切迫感・残尿感・痛み・シビレ・かゆみ)の発現です。それぞれの病気の仕組みは、下記の通りです。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
★慢性前立腺炎=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕脊髄神経回路の完成
★慢性膀胱炎=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕脊髄神経回路の完成
★間質性膀胱炎=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕脊髄神経回路の完成
★過活動膀胱=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕脊髄神経回路の完成
★前立腺肥大症=排尿障害➕膀胱三角部の過敏➕前立腺の肥大➕脊髄神経回路の完成
★神経因性膀胱=排尿障害➕膀胱出口の硬化→→→排尿障害の強化
★PSA高値=排尿障害±炎症±前立腺肥大症±先天性±前立腺ガン
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
Dyausynp
ご覧の通り、すべての病気に排尿障害が絡んでいます。その排尿障害の程度はピンからキリまであります。なかには、患者さん自身が自覚しない程度、あるいは医師が評価しない程度の排尿障害のため、まったく治療しないので中々治らないのです。

病気はイラストのように4つの時期に分けて判断します。
★1期は排尿障害があるにもかかわらず症状の出ない状態です。いわゆる「未病」の状態です。
★2期は、脊髄神経回路が完成して症状がで始めた状態です。
★3期は、排尿障害が治療されないために、脊髄神経回路がバージョンアップしてしまい、症状が強く出ている状態です。
★4期は、脊髄神経回路が排尿障害から独立・独り立ちして、神経回路がますます複雑になり、完成度が極めて高くなった状態です。排尿障害を治療しても治リません。信じられないほどの強い症状になります。頻尿が毎日80回以上、突然あるいは持続性のナイフで刺されたような痛み、血が出るくらい何遍掻いてもカユミが収まらない状態です。

治療する医師は、この状態を十分に把握して治療しなければなりません。
★排尿障害に対してはアルファブロッカー(ユリーフ、ハルナール、フリバス、エブランチル)です。
★膀胱三角部の過敏さに対しては、ベタニス、ベシケア、ウリトス、ステープラ、アボルブ、タガメット、サプリメント(イソフラボン、ノコギリヤシ、カボチャの種、正露丸)です。
★脊髄神経回路に対しては、トラムセット、リリカ、カロナール、仙骨神経ブロック、サプリメント(グリシン)です。

世間では、患者さんを十分に調べもせずに、病名だけで治療する輩の何と多いことか!親身になって、患者さんの言葉を真摯に受け止めて治療しようと努力する医師が、もっと増えて欲しいと思います。


| | コメント (1)

前立腺ガンの低用量治療法

前立腺ガンはモノではなく、生き物です。ところが、医師は患者さんの前立腺ガンをモノとして対応しているとしか思えません。もしも、モノであるのならば、治療法に抵抗するホルモン抵抗性・去勢抵抗性前立腺ガンCRPCにはならないでしょう。
Krebskenka
ガン細胞だって意思はないかもしれませんが、正常の細胞と同じに、それなりの感受性はあるはずです。そのガン細胞を針生検で10カ所以上も突いて突いて突いて、その後大量のホルモン剤や抗ガン剤を投与され正面から攻撃されたら、何とか自分を守ろうと努力工夫して強くなるのに決まっています。
Krebskenka2
そのような考えで、
①まずは、針生検をしないで前立腺ガンを確定診断する。
②次に、ホルモン剤を通常の投与を続けると、ガン細胞もその攻撃に対して気がつき対抗手段を画策するので、極少量か、前立腺肥大症の治療薬を投与する。
③抗ガン剤も同様で、極少量を投与して、ガン細胞に気付かれないように毒を盛る。
④排尿障害のあるヒトは、排尿の際、前立腺に物理的刺激がかかるので、なるべく回避するために排尿障害の治療薬を処方する。

もともと穏やかな前立腺ガンです。ですから、穏やかな治療するべきです。もしも、本来、穏やかな前立腺ガンが対応能力に長けているガン細胞であれば、強い攻撃に対しては強く報復する性格があるのかもしれません。しかし、どうやったら巧妙に前立腺ガンをだまして毒であるホルモン剤や抗ガン剤を取り込ませるかです。
以前にエストラサイトを利用した低用量処方について記事を揚げています。エストラサイトに限らず、強いお薬は低用量処方を試みることにしています。

| | コメント (3)

前立腺ガンが生まれる理由

Prost1
前立腺ガンは、前立腺の外腺(辺縁領域)に多くできます。その理由は、いろいろと言われていますが、前立腺の構造学的観点から考えてみます。
このイラストは、胎児11週目の下部尿路を表現しています。
まず、尿道から前立腺の原基である芽が出てきます。それが、中心領域と辺縁領域です。

Prost2
中心領域と辺縁領域がある程度の成長後に、遅れて移行領域が発芽します。
中心領域と辺縁領域の成長がある程度で休んでいると、移行領域の発育がますます大きくなり、尿道の前側から後ろ側に、尿道を覆いかぶさるように発育します。その結果、移行領域と中心領域が1つに融合して内腺になるのです。

Prost3
内腺はドンドン発育し大きくなり、次第に辺縁領域を外側に圧迫することになります。
辺縁領域=外腺は、内腺による圧迫と、硬い繊維組織でできている前立腺被膜の間に、ギューギューと挟めれ常に圧迫刺激を受け続けます。
40歳過ぎてから、内腺はますます大きくなって前立腺肥大症になりますから、外腺は更に一層圧迫されます。また、前立腺肥大症で排尿障害が出現し、排尿の際に排尿圧力が前立腺に直接かかり、外腺はトコトン刺激を受けます。
Testgraf_2
つまり、前立腺外腺は、前立腺が生まれた時は辺縁領域として、出産後は外腺として、40代以降は内腺にできた前立腺肥大症に強く圧迫される外腺として、何回も圧迫刺激を受け続けています。そして、男性ホルモンであるテストステロンの変動刺激を胎児の頃から6回も受けています。これほど物理的刺激・化学的刺激を受ける窮屈な分泌腺は生体内には存在しません。外腺にガン細胞が生まれても不思議ではないでしょう。

| | コメント (2)

代替医療に希望を託す前立腺ガンの患者さんのその後

前立腺ガンの治療を中止後、PSA値が78まで急上昇した患者さんです。

PSA値が一時78まで再上昇していたのですが、イクスタンジとエストラサイトの併用で、78→2.1まで下降しました。
イクスタンジは普通処方であれば、毎日1錠→毎週1回1錠に、エストラサイトは毎日4錠服用→毎週1回1錠に極端に減量して服用してもらいました。実にイクスタンジは1/7に、エストラサイトは1/28に減らして処方したのです。この処方であれば、強い副作用が少ないのです。

この患者さんは、初めの頃は、『本当に効くの?』と不安に思っていらしたそうです。ところが、……
ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー
Pca36080m69psa401ps
高橋先生
高橋先生にはご健勝のことと存じます。先日はご無理を申し上げSGLT2阻害薬を処方して頂きありがとうございました。時々、息抜きに少々の甘いものを食していますが、阻害薬の服用によってさらなる糖質制限が叶うのではと期待しております。
さて、本丸のPSAですが、2月1日の血液検査の結果、3・16まで下がり正常値の範囲に入る事ができました。初診時には通常の28分の1のホルモン剤の服用に正直不安を感じましたが、今では今回の結果の喜びと共に高橋先生の適切な治療に心より感謝しております。
本当にありがとうございました。まだまだ油断は出来ませんが、今後ともよろしくお願い申し上げます。
とりあえずご報告まで。
ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー
高橋先生
高橋先生に置かれましては相変わらずご健勝のことと存じあげます。明日から春の彼岸に入ります。寺を預かる拙僧と致しましては、今年の春の彼岸の檀家さん巡りが愚息と共に出来るのも高橋先生のお陰と感謝しております。
その感謝の気持ちと共に嬉しいご報告がございます。彼岸の前にと思い血液検査を受けました結果 P S A が 2 .1まで下がりました。でも、あくまでマーカーだけの数値ですので、次回お診察にお伺いした時に画像検査をしていただき今後のご指導を仰ぎたいと思いますので何卒よろしくお願い申し上げます。
ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー
Pca36080m69psa21ps
初診時の超音波エコー検査では、前立腺右葉に確認できた前立腺ガンの体積は1.28ccでした。前立腺の体積は23ccでした。
4ヵ月間の治療結果、PSA値は2.1まで下降しました。前立腺の体積は13㏄まで小さくなりました。
今回のエコー検査では、前立腺ガンの体積は0.29ccと1/5になりました。
触診でも前立腺の硬結が分かりにくくなりました。
この方法で効果が確認できましたから、副作用のことも考え、さらに少量にすることにしました。
イクスタンジとエストラサイトを2週間に1回1錠にしたのです。そして、交互に服用してもらうことにしました。イクスタンジが1/14、エストラサイトが1/56にしました。今後の効果が楽しみです。

5f0996064a8a467991619ca67503251d
この患者さんの副作用が乳房が少し膨らみ、乳首が痛くなりました。
ある意味、モノセックス・中性になった状態です。
この患者さんは、あるお寺の住職さんです。モノセックスになったと言うことは観音さまになったとも言えます。前立腺ガンという難病に遭遇して、精神的に難行苦行の末、お坊さんとして高みを得たのかもしれません。

私は夜間血液透析しないがら、今この記事を書いています。私も人生修行の身です。私が高みを得るのはいつのことでしょう?

| | コメント (5)

ガンの5年生存率(週刊現代の記事から)

今日4月2日月曜日に発売された週刊現代で、治る「がん」治らない「がん」というテーマの記事がありました。記事の根拠になるデータは、全国がんセンター協議会の統計から得ているそうです。
各臓器のガンを年代別(50代・60代・70代)・ステージ別(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ)で記載されています。ガンの特徴を著しく表現できるのが、60代のステージⅢ(臓器の外側に浸潤)だと思います。そこで、ここに簡単にまとめてみました。
ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー
Syukangendai20184
肺がん: 35.1%
胃がん: 49.4%
直腸がん: 89.3%
結腸がん: 87.8%
肝臓がん: 8.4%★
膵臓がん: 6.0%★
腎臓がん: 58.2%
食道がん: 42.3%
胆嚢がん: 10.9%★
前立腺がん: 100.0%※
膀胱がん: 58.9%
甲状腺がん: 99.3%※
ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー
このデータを見て、いかが思われましたか?
ガンとして恐怖しなければならないのは、生存率70%以下のガンだと思います。なぜなら3人に1人が5年持たないからです。そのようなガンが、肺がん、胃がん、肝臓がん、膵臓がん、腎臓がん、食道がん、胆嚢がん、膀胱がんです。特に、★で印したガンは、5年間に10人に1人しか生き残れません。
それらのガンと比較すると、前立腺がんや甲状腺がんは、同じガンとは思えません。有名な先生が唱えた「ガンもどき」と考えることができます。
記事の中では、前立腺がんは治療法が進歩したので、生存率が良くなったと言うことでした。それにしても、前立腺がんと甲状腺がんの生存率は断トツで高過ぎませんか?そういう意味では、前立腺がんは、「ガンもどき」かもしれません。前立腺の中に眠っている時は、「ガンもどき」で針生検で発見されると「癌」になってしまうのかもしれません。もちろん、「ガンもどき」から「癌」になるものもあるでしょう。そのタイミングを見つけるのが、PSA検査+触診+エコー検査かもしれません。

| | コメント (5)

針生検で発見できなかった前立腺ガンの患者さん

患者さんは50代の男性です。
平成29年11月にPSA値が26(正常値4.0)と高く、地元のがんセンターで前立腺針生検(10本)を実施したのですが、ガン細胞が発見されませんでした。その後の主治医対応に納得がいかないので、高橋クリニックに訪問されました。
Bphpca
触診では、前立腺が大きく前立腺全体が前立腺肥大症の雰囲気です。
しかし、前立腺の右上部(膀胱より、精嚢腺側)に硬結が触れます。私の人差し指がギリギリ届く範囲の距離です。自分の指の長さが短いのが診断能力の限界を感じる瞬間です。

Pca36271m55psa26ps
そこで、エコー検査で観察すると、前立腺は114cc(正常値20cc)と5倍以上の大きな前立腺肥大症でした。さらに丁寧に観察すると、前立腺の膀胱よりの精嚢腺手前にガンと思われる陰影が確認できました。この写真の赤い矢印の部分がガン組織です。
Biopsybph
恐らく、前の主治医が事前に十分に下調べもせずに、PSAの値だけで大雑把に針生検した結果だったのでしょう。前立腺肥大症であれば、前立腺針生検の本数を増やさなければ、発見の確率は低くなります。前立腺20㏄で10本ならば針1本当たりの単位体積は2.0㏄ですが、前立腺114㏄だと1本当たり11.4㏄になってしまいます。同じ単位体積にするには、57本もの針生検をしなければ一致しません。しかし、現実的には無理です。なぜなら、本数を重ねる毎に前立腺がグチャグチャになってしまうからです。
この患者さんのガン発見のためには、エコー所見を参考に、イラストのように針を5センチ程先に刺入させ、その場所からパンチ刺入すればガン組織を採取できるでしょう。

エコー所見では、陰影が丸味のある形状をしていますから、悪性度は低いものと思われます。先ずはプロスタールを処方しました。前立腺肥大症が小さくなると同時にガン組織も小さくなるでしょう。

| | コメント (0)

前立腺針生検の精度

Needleps
「針生検」という言葉はよく耳にされると思いますが、ほとんどの人がその道具を見られたことはないと思います。
この写真が針生検の針です。二重構造になっていて、内刀と外刀に分かれています。先ず先端の部分を前立腺にチョッとだけ刺します。スイッチを入れると、内刀が2センチ程前立腺の中に刺入します。次に時間差で外側の外刀部分が刺入します。その時に内刀の凹み部分にハマった前立腺組織を外刀が削り取って針の中に納めるのです。

Pca36269m62psa657ps
この写真は、PSA値6.57の62歳男性の患者さんです。
矢印の部分が前立腺ガンです。前立腺尖部に小さな組織の塊りが確認できます。
厚さは最大で2.7㎜しかありません。

Pca36270m56psa119ps
この写真は、PSA値11.9の56歳男性の患者さんです。
矢印が前立腺ガンです。前立腺右側に小さな組織の塊りが確認できます。
厚さは最大で4.6㎜しかありません。

この2人の針生検をする際に、この写真のイメージを頭に入れながら針生検をしなければ、ガン組織を採取することが出来ません。なぜなら、針生検の際に、先端の部分を前立腺組織に5ミリ程刺します。そしてスイッチを入れて、時間差で内刀→外刀の順で針がスライドします。ここに盲点があるのです。前立腺組織に5ミリ刺した時点で、この2人のガン組織を貫通してしまいます。その後、ガン組織を超えて正常部分の組織を採取しても全く意味がありません。
Img_0656
イラストのように大雑把に針生検するのでは、10本〜20本刺しても、前立腺ガン組織を見つけることが出来ません。前立腺ガンは、主に外腺にできるのに、当てずっぽうで前立腺の中心組織を狙って刺しているのです。事前に組織の位置と深さを念頭に針生検をしなければなりません。このような場合、始めの針先端の刺入時に1ミリ位のチョッとだけ刺すようにすれば、ガン組織を採取することが出来ます。本当にサジ加減です。PSA高値だからと言って、触診もエコー検査もしないで針生検した場合は、前立腺ガン組織を傷付け刺激するだけで放置してしまいます。傷付けたガン細胞が、ジッと沈黙を貫くとは思えません。もっと頭をフルに使って繊細に検査すべきです。

今回のテーマは、ある製薬会社のMRさんとの会話の中で思いつきました。

| | コメント (0)

m3.comの記事から BRCA遺伝子変異が前立腺癌にも関連か【米国泌尿器科学会】

前回、BRCA1/2遺伝子変異と前立腺癌について解説しました。
過去のm3.comの記事(米国学会短信2016年5月26日)から下記の内容の記事を見つけたので要約しご紹介いたします。

―★―★―★―★―★―★―★―★―★―
 乳癌リスク上昇に関連するBRCA1とBRCA2遺伝子の生殖細胞系列変異が前立腺癌発症や予後の悪化に関連している可能性があるとの複数の報告が米国泌尿器科学会(AUA)の年次学術集会で発表された。5月9日の同学会プレスリリースで複数の関連演題の概要が紹介されている。

❶【ウォルター・リード米軍医療センターからの報告】
根治的前立腺摘除術を受けた前立腺癌患者857例→血液DNAサンプルを解析
・BRCA1/2遺伝子変異率が、黒人:白人=7.3%:2.2%と黒人に多い。
・前立腺癌の転移リスクは、BRCA1/2遺伝子変異ある人:ない人=9.4%:2.4%
遺伝子変異のある人に前立腺ガンの転移リスクが高くなる。

❷【イリノイ州の研究グループによる乳癌既往の男性に対する前立腺癌検査の意義】
原発性乳癌と診断された「男性」5753例→その後の前立腺癌発症率を検討した。
平均4.3年の追跡期間において250例が乳癌の後に原発性前立腺癌を発症していた。
これらの因子を保有する男性乳癌患者への前立腺癌検査が必要かもしれないと考察している。

❸【論文データベースMEDLINEを用いたメタ解析】
 BRCA2遺伝子の変異を保有する前立腺癌患者261例の検討
・診断時の平均年齢は61.7歳
・71%が高悪性度(グリソンスコア7以上)、
・41%が局所浸潤または周囲臓器浸潤あり(T3/T4)、
・26%が遠隔転移ありと判定されていた。
・前立腺癌転移リスクは、BRCA2遺伝子変異保有男性:非保有例=17.4%:4.4%
・病期分類T3/T4(ステージⅢ・Ⅳ)の割合は、遺伝子変異保有者:非保有者=40.3%:10.8%

| | コメント (0)

前立腺ガンとBRCA遺伝子

Img_0994
Img_0991アンジェリーナ・ジョリーというアメリカの有名なハリウッド女優さんが、乳がん遺伝子のリスクがあるので、乳房摘出と卵巣摘出を時間を置いて行いました。その遺伝子がBRCA1と2と言う癌抑制遺伝子の変異だったのです。この2つの遺伝子の変異が、乳がんと卵巣ガンの発生リスクを高める上に、遺伝するのです。
血縁関係(祖母・母・叔母など)の中に乳ガンや卵巣ガンの体験者が存在した場合は、ご自分の遺伝子のBRCA1/2遺伝子に変異がある可能性が高くなります。

Img_0879この2つのBRCA遺伝子の変異が、実は、男性の前立腺ガンにも深く関わっているのです。血縁関係に乳ガンと卵巣ガンの体験者が存在する場合、もしかするとBRCA1・2遺伝子の変異がある遺伝性ガン体質の可能性があると、男性であっても安心は出来ません。何故なら、その遺伝子変異は、イラストのように男女関係なく遺伝して男性にも伝わり、それが前立腺ガンの発症リスクになると言うのです。その遺伝子変異が原因で生じた前立腺ガンは、かなりの確率で転移性の前立腺ガン、すなわち、悪性度の高い前立腺ガンになるのです。

Img_0990
そんな能力を秘めたエリート前立腺ガンは、ホルモン治療や抗ガン剤にも抵抗力の強い去勢抵抗性前立腺ガンになるのです。そのような患者さんの場合、治療手段がない訳ではありません。
実は、BRCA遺伝子変異を修復させる治療薬リムパーザを投与すると、効果がかなり出てくるようです。

血筋の身内に卵巣ガンや乳ガンの女性がいる男性の場合、遺伝子チェックして、もしもBRCA1/2遺伝子の変異が認められたら、40歳過ぎたらPSAチェックを頻繁に行い、あるいは女優のアンジェリーナ・ジェリーと同じく事前に前立腺を摘出するという方法もあります。

前立腺ガンの治療法の選択に迷った時には、BRCA遺伝子の変異を調べると良いかも知れません。なぜなら、変異が認められたら、悪性度の高い前立腺ガンの可能性が高いので、サッサと手術して前立腺を除去した方が良いかも知れません。前立腺ガンの悪性度を高める理由は幾つかかあるかも知れませんが、このBRCA遺伝子変異がその1つです。


BRCA遺伝子のチェックは、下記の医療機関でできます。
自費で20万円~30万円位です。
HBOC(遺伝性乳がん・卵巣がん症候群)協会のホームページ
http://hboc.jp/facilities/index.html

| | コメント (0)

前立腺ガンの年齢階層別推移

Pcano
前立腺ガンの罹患数を年代別に観察すると、グラフのようになります。(2016年統計)
40歳過ぎてから、罹患数は急激に上昇します。

Pcano3
前立腺ガンのラテント癌の潜伏率と、年代別の増加推移を比較したグラフです。
年齢を重ねる毎に潜伏率は増えます。この曲線と前立腺ガンの罹患数の増加曲線が近似したものになります。
つまり、罹患数の増加は、加齢に伴うラテント癌の潜伏率に比例しているのです。
もしも男性全員に前立腺針生検を実施すれば、罹患数はこんなものでは終わりません。桁が2桁は多くなります。80代は、930万人存在しますから、ラテント癌は、465万人存在することになります。

Pcano2
初めのグラフと男性生涯の男性ホルモン(テストステロン)の推移を比較すると、このグラフになります。
男性ホルモンが下降に沿って、次第に前立腺ガンの罹患数が増加しているように見えます。
前立腺は男性ホルモンの低下、特に60歳を越えたテストステロンが最盛期に60%に低下した時を境に、その変化を引金にして前立腺ガンが発生すると考えられます。
これから、考えると更年期前後でテストステロンの補充療法が前立腺ガンの抑制効果が得られるかも知れません。

要するに、前立腺ガンの罹患率は、
①年齢による潜伏率
②年齢によるテストステロンの低下
に相関しています。つまり前立腺癌は年齢とともに増加する自然現象です。その自然現象に針生検で刺激することが、寿命に影響するガン細胞に変身するのではないでしょうか?

| | コメント (7)

前立腺の基礎医学♯4(臨床医学的観点)

【臨床学・泌尿器科学的観点】
前立腺の病気で問題になるのが、次のものです。
❶急性前立腺炎
❷慢性前立腺炎
❸膀胱頚部硬化症
❹前立腺肥大症
❺前立腺ガン
❻男子不妊症
ー★ー★ー★ー
❶急性前立腺炎
突然の細菌感染と誤診されることが多いのが現実です。急性前立腺炎になる患者さんには、必ず排尿障害が隠れています。一般的には、膀胱頚部硬化症です。排尿障害があると、排尿の度ごとに前立腺は圧迫と振動を繰り返し受けます。その物理的刺激により前立腺内の白血球は過剰に反応し易くなります。そのため、前立腺内の常在菌に過剰反応すると、急性前立腺炎になるのです。

❷慢性前立腺炎
急性前立腺炎を繰り返す患者さんに、慢性前立腺炎症状が発症することが多いのが現実です。理由は、急性前立腺炎と同じで、膀胱頚部硬化症による排尿障害が慢性的に繰り返し繰り返し前立腺を刺激する結果です。この慢性的刺激により、前立腺が神経的に過敏になり、慢性前立腺炎症状になるのです。ですから、抗生剤や抗菌剤を服用しても本質の治療にはなりません。興奮した白血球や常在菌を抑えるだけです。

Img_0904❸膀胱頚部硬化症
生まれつき、膀胱頚部が排尿時に漏斗状に開き難い人が、一定の確率で存在します。そのため、膀胱出口が十分に開きません。膀胱出口が排尿の度ごとに、膀胱出口が振動します。結果、膀胱出口が硬くなり膀胱頚部硬化症になり、前立腺に振動負荷がかかり、前立腺の機能低下や前立腺の膀胱内への突出を促すため、なお一層排尿障害が強くなります。前立腺ガンの腫瘍マーカーであるPSA値が高くなります。この写真は、慢性前立腺炎と診断された患者さんのエコー所見です。膀胱三角部の突出=膀胱の魚の目が確認出来ます。

Img_0902❹前立腺肥大症
食生活の向上により、前立腺肥大症の要素である平滑筋が大量に造られ易くなります。
また、先の膀胱頚部硬化症による物理的振動エネルギーが刺激になって、前立腺肥大症を促進します。ですから、前立腺肥大症の患者さんの多くが、もともと膀胱頚部硬化症があり、排尿障害症状の主な原因が、前立腺肥大症の大きさではなく、膀胱頚部硬化症なのです。その証拠に、前立腺肥大症の症状の強い患者さんに膀胱出口の緊張を和らげるαブロッカー(ユリーフ・ハルナール・フリバス)服用するだけで、前立腺の大きさを無視しても、症状が軽減することが多いのです。前立腺肥大症の大きさが、正常の2倍であれば、PSA値も2倍になります。

Testgraf2
❺前立腺ガン
発生学で解説したように、前立腺外腺はいくつもの刺激を受けます。
⑴胎児期に性別分化のための一時的なテストステロンの刺激
⑵出産直後の大量のテストステロンの刺激
⑶思春期の大量のテストステロンの刺激
⑷更年期以降のテストステロンの減少の刺激
⑸中高年以降の前立腺肥大症による圧迫と排尿障害の排尿時の振動刺激
Img_0903
少なくても5つの刺激要素で、前立腺の外腺は一生かけて5回の刺激を受けるのです。これほど物理的・ホルモン的刺激を受ける分泌腺が他にあるでしょうか?その結果、癌細胞が発生しても不思議ではないでしょう。この写真は、PSA値が高く来院された患者さんのエコー所見です。小さな前立腺ガン(赤い矢印)が外腺に認められます。

❻男子不妊症
生理学で解説したように、前立腺の分泌する前立腺液は、精子の活動にとって必須の要素です。排尿障害による前立腺の物理的疲労は、分泌腺としての前立腺液が質・量ともに十分に分泌されなくなります。その結果、男子不妊症になるのです。したがって、男子不妊症の患者さんに遭遇いたら、排尿障害を見つけ出して治療して、前立腺の負担を解除し、前立腺液が正常に快復させるのです。
ー★ー★ー★ー

私の考え方は、とても偏向的です。何にが何でも膀胱頚部硬化症が原因だという考え方です。私は完璧な人間ではありませんから、誤診した時はご免なさい。

【参考文献】
男の更年期 日東書院

| | コメント (7)

前立腺の基礎医学♯3(生理学的観点)

Pbackps
前立腺は、4つの役目を担っています。
❶射精器としての前立腺。前立腺を収縮して、その収縮力で精液を体外に噴出させる。射精の押し出す力である。
❷分泌腺としての前立腺。前立腺液を分泌して、子孫繁栄に必要な精子の活動を援助する。
❸ミキサーとしての前立腺。精嚢腺液と前立腺液と精子をミックスする場となる。
❹整流装置としての前立腺。
❺ホルモン反応臓器として前立腺
―★―★―★―★―★―★―★―★―★―
❸前立腺液の成分は次の通りです。
⑴弱酸性
精嚢腺液は、強アルカリ性pH7.5で、精子の活動を抑える作用があります。女性の膣内には殺菌作用のある乳酸菌の出す強酸性の乳酸に負けないように、弱酸性pH6.5の前立腺液と強アルカリの精嚢腺液が、適度に混ざって、弱アルカリ性の精液になるので、精子が元気に活動できるのです。
⑵アデノシン三リン酸ATP
精子はエネルギーの蓄えがありません。ミトコンドリアは持っているので、周囲の環境からミトコンドリアにエネルギーの補給の必要があります。そのエネルギーがATPなのです。
⑶PSA
精液の粘り気をサラサラにするのが、PSAというタンパク分解酵素です。精液をサラサラにすることで、精子の活動範囲が広くなって、卵子との遭遇する可能性が高くなる=妊娠し易くなるのです。このPSAが前立腺から漏れ出て血液中の濃度が高くなる事を前立腺ガンの目安=腫瘍マーカーになるのです。
ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー

Img_0899❹整流装置としての前立腺
4センチという短く真っ直ぐな女性の尿道に比べ、男性の場合場合は約20センチと長い(膀胱出口から尿道出口)上に、少なくとも二カ所屈曲しています。前立腺から直ぐ出た所(尿道球部)で約90度曲がり、陰茎の根元(振子部)でまた90度曲がります。そのため、尿道が単なるホースであると、各曲がりの個所で流れの位相差が生じます。その結果、尿道出口から尿が出るときには尿が散ってしまいます。

Uzu
乱流・渦流を防止するために、スムーズな流れを作るための施しが、前立腺と尿道に工夫されています。
このイラストは、ある整流装置の説明図です。
何もしない管の中を流れる流体は、管の近辺に乱流・渦流が生じます。ちょうど、電車のホームに立っていて、急行や特急列車がそばを通過すると、電車に引き込まれるような突風が吹きます。あの突風が乱流です。乱流にしないためには、このイラストのような整流装置が必要になります。

Turbn1
①整流装置としての精丘
前立腺の尿道括約筋手前に精丘(精阜せいふ)と呼ばれる突起が存在します。
ここを尿が流れると、先程の整流装置のように内側・中心部へ向かう渦が出来ます。すると、流れに速い部分と遅い部分になり、層流が出来ます。層流は整流になり、尿道近辺に渦が出来なくなります。
Img_0900
この写真は、手術後の前立腺内部の内視鏡所見がです。丸い部分が精丘です。
②尿道全体が整流装置
排尿中は、膀胱出口の膀胱頚部や尿道全体がある一定の間隔で直径が変化・拍動します。直径が拍動することで渦流・乱流が出来なくなります。動脈が拍動するのは、乱流を防止して血栓を作らないためです。
前立腺肥大症になると拍動が起きないので、オシッコが散ったり割れたりするのです。
ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー★ー

Testgraf
❺ホルモン反応臓器としての前立腺
男性は生涯をかけて、このぐラグのように男性ホルモン=テストステロンの変化のピークが4回あります。
①胎児期、②出産直後、③思春期、④更年期です。
①胎児期:
第6週の胎児期に、性別を分けるためにテストステロンが予想以上に大量に分泌されます。その結果、前立腺芽が成長して前立腺になるのです。その際に、中心領域と辺縁領域が形成されます。しかし、前立腺肥大症の原因組織である移行領域は、いつ出来るのか不明です。
②出産直後:
出産後数ヶ月で再びテストステロンがピークを迎えます。おそらく、この時期に移行領域が発芽するのでしょう。そして、男としての骨格や筋肉の作られるキッカケにもなるのでしょう。
③思春期:
皆さんもご存知のように、十代後半から男性ホルモン=テストステロンが盛んに分泌され二十代でピークになります。この時期に男の子は男らしくなるのです。そしてある日、精液が出せるようになります。つまり、前立腺が完成するのです。恐らく、この時期に移行領域が成長発達し、エコー所見でも確認できる程の大きさボリュームになるのです。
④更年期:
それまで高かったテストステロン濃度も、45歳頃から分泌が徐々に低下していきます。50代で60%、60代で50%、70代で40%です。その分泌変化が刺激になり、前立腺の移行領域が前立腺肥大症に変化して行くのです。
⑤圧力も刺激?
思春期③を過ぎてから前立腺の移行領域は成長して体積が増えます。前立腺は、すでに存在する辺縁領域の外腺が、移行領域の内腺と硬〜い線維性の前立腺被膜の間に挟まれて圧迫されます。さらに更年期④を過ぎると内腺はますます大きくなり結果、前立腺肥大症になります。外腺はなお一層圧迫されます。ホルモン変化の刺激を4回、圧力刺激を2回もさらされて、外腺はトコトン刺激を受けます。この刺激が前立腺ガンを誕生させるキッカケになるのかも知れません。

【参考文献】
解剖学アトラス
男の更年期 日東書院

| | コメント (0)

前立腺の基礎医学♯2(解剖学的観点)

Ppart4
【解剖学的観点】
今まで私たちが学んだ前立腺の知識は、構造的に内腺と外腺に分類されていました。前立腺肥大症は内腺から、前立腺癌は外腺から発生すると信じられています。

Ppart
しかし、新しい知識として、前立腺は移行領域、中心領域、辺縁領域に分けることが出来ます。
既存の知識である内腺は、移行領域と中心領域が融合して作られています。外腺は尿道括約筋付近から発生し外側に発育する辺縁領域です。移行領域は前立腺の前面から、中心領域は膀胱頚部から誕生するのです。尿道に沿って発育し、外腺の内側に存在します。つまり、尿道の周囲であるので、排尿の善し悪しに直接関わることになります。前立腺は尿道を挟んで、後側の上下からと前側の真ん中から発生するのです。
Ppart3ps
内腺は、思春期の男性ホルモンであるテストステロンの分泌が盛んな思春期以降に更に発育し、更年期の男性ホルモン分泌が低下するタイミングで、その変化が刺激になって前立腺肥大症に変化するのは、納得できる反応です。しかし、移行領域と中心領域由来の内腺からの前立腺肥大症は、尿道に直結しているので、排尿障害に当然関与します。また、内腺部分が大きく発育しても、以前から存在する外腺に周囲を阻まれますから、抵抗のない膀胱側に発育するので、それが膀胱突出型の前立腺肥大症(中葉肥大型)になるのです。このタイプは、極めて排尿機能が低下します。

【参考文献】
解剖学アトラス
An Atlas of Prostatic Diseases 3rd edition


| | コメント (0)

前立腺の基礎医学#1(発生学的観点)

前立腺の病気を理解するためには、前立腺の本質を十分に知ることです。しかし、私も含めて臨床医は基礎医学をおろそかにしているので、臨床現場で応用が効かなくなるのです。基本に戻って、前立腺を見直してみましょう。
Developp
【発生学的観点】
胎児第11週の時期に男性ホルモンのテストステロンが一定期間分泌され、その刺激で既にある尿道の原基から、次第に内胚葉性の前立腺芽が周囲の間葉組織中に浸入するように発育し始めます。それが前立腺になります。
第16週には、前立腺がほぼ完成します。この時期に前立腺に対して、精嚢腺に繋がった射精管と、尿管由来の膀胱三角部とが連結します。前者が子孫繁栄に、後者が排尿機能に重要な役割をします。つまり、子作りと排尿は、ほぼ同時に出来上がり、人間の存在には欠かせない二大巨頭になるのです。
Developp2
臨床的には、前立腺は、内腺と外腺の2つに区別することが出来ます。これは、発生の時期が異なるという事でしょう。しかし、発生学では、この根拠を見出すことは出来ません。尿道から前立腺が生まれたという事と、外腺が外側に位置するという事で、内腺の方が後から生まれた?、つまり、内腺の方が若いと言う事でしょうか?
そう考えると、外腺の誕生後しばらくしてから、男性ホルモン・テストステロンの分泌が急に増加する時期があり、尿道から再び前立腺組織が発芽して前立腺の内腺が誕生したのでしょう。これが、将来の前立腺肥大症になる組織です。
つまり、前立腺は内腺も外腺も時期をずらして尿道から発生するのです。同じ前立腺にもかかわらず、内腺は若く、外腺は年上で、原始的な性格を有しているであろうと考えられます。したがって、外腺から前立腺ガンが発生するのは理にかなっています。

Ppart3ps
以上、発生学の専門書を何冊か読んで、臨床と関連付けて連想できるドラマです。これ以上は記述がないので、裏付けを取れません。そこで、最近の前立腺の事しか記載のない専門書を調べると、前立腺を3つに分けることが出来ます。それは①移行領域、②中心領域、③辺縁領域です。②中心領域は今まで内腺と呼ばれる部分で膀胱頚部から、③辺縁領域は今まで外腺と呼ばれる部分で尿道括約筋付近から発生するのです。①移行領域は、前立腺前面から発生して次第に前立腺の大部分を占め、中心領域と融合して、臨床的に内腺になります。
発生学の記述に比べて、実際の前立腺は発生箇所が異なり、さらに発生時期が異なるであろうという印象です。詳細な時系列も理解できれば、前立腺の本質も見えて来るでしょう。

【参考文献】
ムーア人体発生学第6版・第8版
An Atlas of Prostatic Diseases 3rd edition


| | コメント (0)

グリソンスコア8:悪性度の高い患者さんが治療して無事に6年

Gs8pt32029m69
平成24年の1月に前立腺針生検を実施して、結果、グリソンスコア4+4=8の低分化型=悪性度の高い前立腺ガンでした。当時67歳の患者さんです。
悩んだ末、インターネットで私のオリジナルの前立腺ガン治療のブログをジックリ読み、ある決断をしました。地元の内科の医師に頼んで、エストラサイトを処方してもらいました。私の方法は、週に1回1カプセル〜2週に1回1カプセルのごく少量です。通常であれば、毎日4カプセルですから、私の治療法は通常の28分の1〜56分の1のごく少量です。結果、副作用も1/28〜1/56になる筈です。一般の医師は、この程度の容量では、効くわけないと思っています。
この患者さんは、当初エストラサイトを3日~5日に1回1カプセルを服用していました。

この患者さんは、2年ほど地元の内科にお願いしてオリジナル治療を続け、平成26年7月当院に初めて来院されました。その後は、エストラサイト週1回1カプセルの他に、癌抑制作用のある糖尿病の治療薬メトグルコを処方して経過を観ました。
前立腺ガンを発見されてから、6年が経過した今年の1月10日に患者さんは来院されました。現在、PSA値は0.053と超低下です。現在、エストラサイトは月に1回1カプセルです。通常量の1/120の超超低容量です。こんなに少ない処方量でも安定した治療ができるのです。
この患者さんからブログに寄せられたコメントをご紹介しましょう。
―★―★―★―★―★―★―★―★―★―
【コメント】
 先生のブログに何時も勇気をもらっております。先にも2,3度コメント差し上げたことがあります(治療前PSA=12.4、GS=8)。治療初期にはゾラデックス皮下注射+エストラサイト併用でしたが、半年ほど前からエストラサイト(3日毎に1カプセル)の服用のみでPSA監視をしております。この半年間におけるPSA推移は0.06→0.04→0.03と安定しております。エストラサイトは女性ホルモン(エストラジオール)をベースにした抗ガン剤ですが、ゾラデックスと同等にテストステロン産生を効果的に抑制すると理解しています。であるならば、やがては癌細胞が去勢抵抗性となり、再燃することを覚悟しておいたほうがよいのでしょうか?
【回答】
ゾラテックスは抗男性ホルモン作用ですが、エストラサイトは女性ホルモン+抗癌剤の2つの攻撃で、癌細胞自体にテストステロンを作る(去勢抵抗性)ような余裕を与えず、癌細胞を死滅させる目的です。
したがって、漫然とゾラテックスを注射するよりも去勢抵抗性の発現率が低下すると考えています。
また、悪性度が増すのを抑えるために、ビタミンD3の服用も有効と考えます。
投稿: moto | 2013/05/11 21:38

 公務ご多用にもかかわりませず、早速のご回答、ありがとうございました。低用量エストラサイト服用の優位性良く理解できました。ますます、この方向で治療を継続する勇気が湧いてきました!。ビタミンD3についっては癌宣告を受けた時から欠かさず1000IU/dayを服用し、エストラサイトを服用しない日には必ずイソフラボン(60mg)のサプリメント服用、さらに豆乳ヨーグルトと抗酸化性の期待できる野菜ジュースを毎朝摂るよう心掛け、癌との共生に望みをつなげております。何時も簡潔かつ的確のコメントを頂き心より御礼申し上げます。
投稿: moto | 2013/05/12 21:21

その後の経過をご報告申し上げます。ゾラデックスを止め、エストラサイトのみを3日に1カプセル服用を始めて1年4カ月が経ちました。先の報告(2013/5/12)ではPSA0.03まで低下しておりました。現在は0.01以下(タンデム法の検出限界以下)となり、順調に推移しています。今後、5日に1カプセルに変更しようかとも思っていますが、今しばらくは、このままの服用(1カプセル/3日)を続け、ナイトロジェンマスタード細胞毒効果に期待するのも一策ではないかとも考えています。先生の御意見を御伺頂ければ幸いです。公務ご多用の先生ですので、お時間の許す時にでもお答えいただければ結構です。
【回答】
前立腺癌細胞は、45日周期に1回細胞分裂をするというデータがあります。
全ての癌細胞が同時に細胞分裂を起こしている訳ではないでしょうが、45日に1回抗癌剤を服用しても癌細胞は増えないだろうと考えるようになりました。
したがって、3日に1回の抗癌剤の服用は多過ぎるのではないか?と思います。
1週間~2週間に1回の服用ではどうでしょうか?
投稿: moto | 2014/01/07 22:09

ご丁寧且つとても興味深いコメントを頂き、心を強くしております。45日周期での細胞分裂データ、とても興味深いものです! 実は、本日(1月23日)、PSAの最新値が分かりました。やはり、0.01以下と、安定しています。担当医には、2月から1カプセル/5日で様子を見たいとお伝えし、了解を得たところです。半年ほど様子を見た上で、安定していれば、1~2週間に1回服用へと挑戦してみたく思います。
貴重なる御意見を御伺いすることができ、心より感謝申し上げます。公務ご多用のことでしょう。御自愛ください。
投稿: moto | 2014/01/23 14:22

 1月23日に当ブログに投稿後、1カプセル/5日で様子を見ているところです。4月中下旬に採血と診断の予定です。
 私事ですが、5月初め頃、世田谷区〇〇に転居を予定し、準備を始めつつあります。つきましては、転居後は、高橋先生に診察をお引き受け頂きたく、お願い申しあげます。その際には、私なりに記録を続けてまいりました、治療内容、PSA推移データおよび現在の病院から受け取った生検データのコピー(GS=8)を持参したく思います。どうか宜しくご高配ください。
【回答】
はい。
投稿: moto | 2014/03/27 12:51
早速の御快諾ありがとうございました。安心して東京に転居することができます。4月後半の診断でPSA値が安定に推移しているようでしたら、高橋クリニックでの初診を3ヶ月後の7月中旬頃に予定したく思います。どうか宜しくお願いいたします。
投稿: moto | 2014/04/01 20:32

―★―★―★―★―★―★―★―★―★―
Img_0663
グリソンスコア8の低分化型=悪性度の高い前立腺ガンの場合、5年生存率は、統計的に約30%です。この患者さんは、発見されてから6年も過ぎていますから、生存率30%を切っている筈です。私の目の前の患者さんは、元気な影の濃い、後10年も20年も生きれる印象の普通の方です。私の考案した超低容量の治療法でも、患者さんを苦しめないで、予想外の結果を得ることができます。

| | コメント (0)

PSA検診が前立腺ガンの死亡率を減らす根拠

58922ba9d8864ccd87c83cf06784199c

| | コメント (0)

寒いとオシッコが近くなる理由

Naihaigaihai泌尿器科の外来は、寒くなると混雑します。
なぜなら、寒くなると頻尿になる方が多くなるからです。「寒くなるとオシッコが近くなる」という現象は、一般の人でも経験することです。では、なぜ寒くなるとオシッコが近くなる(頻尿)のでしょう?

では、発生学や生理学を元に医学的にその原因を考察してみましょう。

Naihaigaihai私たち体は、妊娠した細胞、つまり受精細胞が出発点です。
初期の受精卵(胚)の外側の部分が外胚葉、内側を内胚葉といいます。外胚葉は早い時点で細胞の中に陥入し脳・中枢神経の元になります。また、外側の部分ですから、皮膚や口・目・肛門の粘膜にもなります。
内胚葉は、もともと内側に存在しますから、内臓の主たる部分を構成します。(図)

外胚葉系の組織は、外の環境の刺激に対して強く反応します。その原始的な反応(外見上の生命現象)の主たる役目を担う部分が、皮膚・目・耳・口の感覚器やその中枢である脳・脊髄神経です。
生命は、一定の温度以上で活発に活動します。ですから、温度が高くなる、つまり暑くなると外胚葉系のシステムが活発に反応します。そのための自律神経が交感神経になります。交感神経が興奮すると、脳下垂体後葉から抗利尿ホルモンが分泌され、腎臓での尿産生が抑えられ尿量が減少し、皮膚の汗腺が刺激され発汗が多くなります。

内胚葉は外胚葉に比較し、後から出来た組織です。生命が独立して自由に動き回るために必要なエネルギーを産生したり蓄積する組織です。生命が活発に活動している時には、生命の主役は外胚葉系の組織になりますが、生命が休止・安静の時には、主役は内胚葉系の組織、つまり内臓系、肝臓・腎臓・膵臓・消化管になります。外胚葉が活発に活動する暑い時の逆、つまり寒い時に活発に働くのが内胚葉系です。
内胚葉系が活発に働くと、副交感神経が興奮します。副交感神経も交感神経の後から出来上がった神経らしく、交感神経ほど緻密で丁寧なシステムになっていません。かなり大雑把の造りです。副交感神経が興奮すると脳下垂体後葉から抗利尿ホルモンの分泌が抑えられ、腎臓の抑制が解除され尿がたくさん作られます。そのため尿量が増えるのです。逆に発汗が抑えられ汗をかかなくなります。副交感神経の興奮は内臓を興奮させ、膀胱が過敏になり、尿量の増加と膀胱の過敏で、オシッコが近く(頻尿)になるのです。

話が長くなりましたが、これが「寒くなるとオシッコガ近くなる」理由です。

人間の体は、さまざまなシステムによって調節・維持されています。今回お話しした内胚葉系と外胚葉系のバランスが、体の反応を生き物らしく見せてくれます。まだまだ他にもたくさんのシステムが何重にも織りなしている筈です。これらを一つ一つ解き明かせば、原因不明の病気治療の解明に結びつくことでしょう。

| | コメント (1)

残尿量正常値の意味

一般的に泌尿器科医が、残尿量の正常範囲は50ml以下と判断しています。

ところが、この数値は嘘です。解剖学や生理学の教科書には、排尿後の残尿量はゼロ(0ml)が正常と明確に記載されています。にもかかわらず、臨床の泌尿器科医は、何故50mlまで正常と断定するのでしょう。臨床医学と基礎医学は違うのでしょうか?

Ilastrpp
これには、ある訳があるのです。
今でこそ前立腺肥大症の手術は一般的で、日本中どこの泌尿器科でも実施されている手術です。内視鏡手術、レーザー光線手術などいろいろです。出血もなく、私などは日帰り手術で行っています。
ところが、その昔、前立腺肥大症の手術は開腹手術でした。イラストで示すように、下腹部を切開して前立腺を露出します。前立腺被膜に平行に6か所に太い縫合糸で事前に予防的止血縫合をします。前立腺被膜下の動静脈を予め縛って止血することで、術中術後の出血を出来るだけ抑えるための処置です。止血縫合糸の間を切開して前立腺を摘出するという方法です。

この方法が確立するまで、前立腺手術には術中・術後も、かなりの出血でした。そのため、大量の輸血や出血死する患者さんがいました。当時の日本は、泌尿器科の専門医は確立されておらず、外科医が前立腺の手術を行っていました。ある外科医が臨終間際に息子の外科医に遺言を残したそうです。「前立腺だけは、手を出すな!」と。泌尿器科専門医が確立された後も、安全な手術法は確立されていませんでした。そのため、どうしても手術しなければならない程、具合の悪い人だけを手術することにしたのです。

Pain34754f49post54cc
そのための具体的な基準の一つに、排尿障害の程度を決めたのです。それが、残尿50ml以上だったのです。つまり、無暗やたらに手術での被害者を作らないための方策が、残尿50ml以上だったのです。
その50ml以上の基準が独り歩きして、残尿量50mlまでは正常=排尿障害なしと間違った解釈に進んでしまったのです。

基礎医学の生理学・解剖学に記載されている様に、排尿直後の残尿量は、ゼロ(0ml)が基準です。残尿量が、例え10mlであっても正常ではなく、排尿障害が必ず存在します。

| | コメント (0)

PSA値326の患者さん

Pca36044m62psa326rps
患者さんのご紹介で、60代の患者さんがお越しになりました。
PSA値がなんと326という高値なのです。
早速、前立腺の触診しました。すると、前立腺の左右に硬結が触れました。間違いなく前立腺ガンです。大きさは、左の方が大きい所見でした。
写真は、前立腺の右のエコー検査所見です。左側の画像が前立腺の正面像で、右側が前立腺ガンの縦断面です。正面像の左下(前立腺の右)に小さな陰影が確認できます。体積は、0.31㏄です。さらに、赤い矢印の下に別の陰影が見えます。左の前立腺ガンの一部でしょう。
前立腺肥大症もあり、前立腺の大きさは58㏄(正常20㏄)です。

Pca36044m62psa326lps
この写真は、前立腺の左のエコー検査所見です。左側の画像が前立腺の正面像で、右側が前立腺ガンの縦断面です。正面像の右下(前立腺の左)に先程の陰影よりも大きな陰影が確認できます。体積は、1.43㏄です。その陰影の左側にかすかな陰影が見えます。右側の前立腺ガンの連続陰影でしょう。

左右に分かれて存在している前立腺ガンから考えて、細胞の悪性エネルギーが強く悪性度は高いでしょう。
両方の前立腺ガンの体積(0.31+1.43=1.74㏄以上)から考えても、PSA値326は高すぎます。おそらく、骨転移しているでしょう。そこで、当院のような街中の開業医では、骨転移の確認ができませんから、大きな病院で検査に行っていただきました。

後日、患者さんが再度ご夫婦で訪れました。大学病院で精密検査と針生検を行いました。結果、大腿骨と骨盤に転移があり、悪性度はグリソンスコア4+4=8の高いものでした。前回の私の診察結果の予想通りでした。現在、大学病院でホルモン療法を始めたそうです。その後、当院でも定期的に診察することになりました。大学病院では、絶対に実行しない代替医療を補助的に患者さんを応援するつもりです。

| | コメント (4)

前立腺ガン悪性度の見分け方

PSA値が高いことで、前立腺ガンを疑われ、前立腺ガンの悪性度を調べることで、今後の治療に役立てるためにと、針生検を実施します。ですから、PSAが高いと、泌尿器科医は針生検を前提にして、話を進めていくのです。患者さんにしてみれば、PSA高値=針生検という決められた路線に無理矢理乗せられてしまうような印象です。男性は、手術などの痛みに対して、とても過敏です。それに、具体的な説明もなしに針生検!針生検!針生検!と馬鹿の一つ覚えのように迫られて、治療する前から精神的に病んでしまいます。

Img_0663
PSA高値=針生検には、実は、浅はかな人間(医師)に神様が仕掛けたトラップが隠されているのです。インターネットで容易に手に入る公のデータで、悪性度の高い前立腺ガンの場合、針生検直後から生存率が一気に低下します。5年生存率が30%、10年生存率が20%まで低下するのです。針生検が、癌細胞を刺激して、勢いをつけたターボチャージャー・エンジンの様な印象です。

これを考えると、患者さんからしてみれば、針生検をしないで、前立腺ガンの診断と治療が出来ないものか?と考えますよね?癌細胞を刺激しない触診とエコー検査とMRI検査で前立腺ガンは、かなりの確率で確認できます。一般的には、これらの検査で悪性度は不明とされていますが、医師が検査結果を緻密に考えれば、かなり予想が付けられます。
Img_0809❶触診
・かなり硬ければ、発生してから長期間経過しているか、あるいは悪性度が高いかのどちらかです。
特にガンの表面がイビツで石のように硬ければ、悪性度が高いと考えます。
・前立腺の左右に癌が触れれば、一か所に留まっていられない程エネルギーが強い=悪性度が高いと考えます。
・前立腺肥大症の硬さであれば、悪性度が低いと見なします。

Pca33063m51psa17ps❷エコー検査
・透過度が高ければ(黒く見えれば)、ガン細胞だけの集合体と考えます。触診の結果を考慮して悪性度を決めます。
・前立腺肥大症に近い透過度(白っぽい)であれば、悪性度が低いと見なします。
・前立腺と前立腺ガンの境界線が明瞭であれば、悪性度が低いと見なします。
・前立腺と前立腺ガンの境界線が不明瞭であれば、発育速度がバラバラなので悪性度が高いと見なします。
❸MRI検査
・前立腺の被膜を越えていれば、発育速度が速いと考えて悪性度が高いと見なします。
・また、リンパ節に転移していれば、やはり悪性度が高いと判断します。
❹治療経過
ホルモン治療により反応が弱い、逆に大きく硬くなってきたと判断された場合には、悪性度の高い前立腺ガンと考えます。
❺患者さんの決断
針生検をしないで、確定診断を受けずに治療するのが嫌だと言う患者さんもおられます。白黒ハッキリさせたいと言う性格の患者さんです。
その場合には、針生検の弊害を熟知した上で、針生検→悪性度の確認→手術・放射線治療という流れに乗るべきでしょう。

前立腺ガンの成長は、年単位なので、慌てることなく、ジックリ考えながら判断すれば良いでしょう。悪性度は、膵臓がんの30分の1程度ですから、刺激しなければ、ほとんどの患者さんが天寿を全うできます。私は透析患者ですから、血管病気、心筋梗塞や脳梗塞で突然死のリスクがあります。私の方こそ、天寿が全う出来ない可能性があるのです。

| | コメント (0)

代替医療に希望を託す前立腺ガン患者さん

Pca36080m69psa401ps
関東近郊から来院した患者さんのエピソードです。

平成26年1月に前立腺ガンを宣告されました。針生検を勧められましたが、患者さんは拒否して、治療だけを受けることにしました。前立腺ガンの治療であるリュープリン注射とカソデックス内服です。
PSA値は、0.5まで降下しましたが、思うところがあって平成27年11月に今までの治療を中止したのです。

現在、代替医療で有名なゲルソン療法と自然食に徹しているのです。ゲルソン療法は、コーヒー浣腸を毎日行い、身体の中から悪い物質を排泄することを目的とします。しかし、これら代替医療を懸命に行なっていましたが、PSA値が次第に上昇して、PSA値0.5→47.1まで上昇しました。現在通院しているクリニックから、当院が紹介されて来院しました。

エコー検査で観ると、前立腺の右に前立腺ガンと思われる陰影が認められるます。体積は1.83ccです。
触診所見では、やはり前立腺の右葉に硬結が触れます。ただ硬さは前立腺肥大症に近いものです。ですから、前立腺ガンのグリソンスコア7以下でしょう。

878ed203b1bc4e2392b6de751fbbfb54依頼された医師からは、リュープリン注射とカソデックス内服を初めて欲しいとのことでした。しかし、2年余りの治療にもかかわらず、1年でPSA値が急上昇した訳ですから、今の治療は不十分で、逆にホルモン抵抗性前立腺ガンに変身したのかもしれません。そこで、今まで使用されていない治療を始めてみました。女性ホルモンと抗がん剤を合体させたエストラサイト、ホルモン抵抗性前立腺ガンの癌細胞中で作られた男性ホルモンをブロック阻止するイクスタンジの併用治療を開始しました。
Dcd503fd9c99408886ecc056a87935b9さて、話はまだ続きます。今後、遠赤外線などを利用した温熱療法(ハイパーサーミア)を希望されています。地元に温熱療法を実施している病院があるので、紹介状を書いて欲しいと依頼されました。そこで書きました。この患者さんはどのような経過を見せるでしょうか。

» 続きを読む

| | コメント (4)

前立腺の触診所見

前立腺の触診所見を皆さんに具体的にご紹介しましょう。
Ilasthandps
❶正常
少し柔らかめです。硬さは、手の親指の根元(拇指球)の柔らかさです。
❷前立腺炎
極端に柔らかくプヨプヨです。しかも、指で圧迫すると、患者は痛がります。
Ilasthand2ps
❸前立腺肥大症
少し芯のある硬さです。手をギューとグー✊にした時の親指の根元の硬さです。
Fd06e64787df437eb8a3dc81e278af4b❹前立腺ガン
⑴悪性度が低い(グリソンスコア6以下)
まるで前立腺肥大症の硬さです。しかし、前立腺肥大症と区別しなければなりません。そのコツは、左右どちらかにしかありません。前立腺肥大症は左右均等です。また、発育速度が遅くユックリと増殖するので、経過が長いと比較的大き目です。
⑵悪性度が中等度(グリソンスコア7)
これは難しいのです。悪性度の低いガンと悪性度の高いガンの中間の曖昧な硬さです。
Ilastdigitals
⑶悪性度が高い(グリソンスコア8・9・10)
まるで石の様な硬さです。あれ?これ石?という感じです。そして表面が凸凹です。悪性度が高い場合は、増殖速度が速くて密度も高いので、小さい硬結でも硬いのです。

触診を面倒くさがらず、マメにコツコツと診察すれば、次第に触診する指先がセンサーになるのです。人間は五感を研ぎ澄ませば、検査器械にも負けない超能力を得ることができます。若い泌尿器科医は、これをおろそかにしているのです。
さらに詳細に鑑別するためには、エコー検査が必要になります。

| | コメント (5)

エネルギーから観た生命力と前立腺ガン

Grafuenergy
前立腺ガンについて色々な角度から観ていると、その本質が何となく見えてきます。
このグラフは、人体の生命力(緑の矢印線)と前立腺ガン(赤の矢印線)のエネルギーを表したものです。
産まれたばかりの生命力エネルギーを100%として、加齢と共に次第に低下してきます。50歳前後の更年期から、生命力エネルギーはガクッと低下します。
逆に、前立腺ガンのエネルギーは30代後半から芽生え始めてきますが、生命力エネルギーを超えることはありません。ですから、前立腺ガンは、ほとんどが寿命に影響しないのです。

ところが、PSA値が高いという理由で、針生検をするために前立腺ガンのエネルギーに火が付いて、急激に増加してしまいます。そのため、前立腺ガンのエネルギーが生命力エネルギーをはるかに超えた時点で寿命が尽きてしまうのです。

E1981c7a5c034ae896757805d570da47泌尿器科医が前立腺癌を発見することを悪いとは思いません。しかし、見つけるために前立腺針生検を行うことが悪いのです。針生検は、前立腺癌という爆弾💣の導火線に火を付ける様なものです。その爆弾がハリボテ(グリソンスコア6以下)だったら良いのですが、本当の爆弾💣💣💣(グリソンスコア8・9・10)だったら大変です。泌尿器科医は、前立腺針生検をしないで前立腺癌をもっと精密・緻密に診断し、針生検なしで悪性度を予想できるくらいの診断能力を付け治療すべきです。そして、その悪性度に応じて治療法を工夫すべきでしょう。


| | コメント (0)

«PSA高値の7人〜8人に1人が顕在ガン